太陽に最も近い惑星
太陽から水星までの平均距離は約5800万kmです。これは太陽〜地球間のおよそ0.4倍(0.4天文単位)になります。ただ水星の公転軌道はゆがんだ楕円をしており、太陽に最も近いとき(近日点)は約4700万km、遠いとき(遠日点)は約7000万kmになります。88日間で太陽を1周します。
水星の自転はゆっくりで、1回転するのに59日かかります。自転と公転の関係で水星での1昼夜(日の出から次の日の出まで)は176日になります。これは水星が2回公転する期間(水星の2年)に相当します。自転軸はほとんど傾いていない(傾きは2度)ため、季節変化はありません。
惑星として最小の天体
水星の半径は約2440kmで、地球の3分の1強しかありません。月(半径約1738km)より一回り大きい程度で、衛星としては最大の木星の衛星ガニメデ(半径約2631km)や、土星の衛星タイタン(半径約2575km)よりも小さな天体です。
太陽系の惑星の中で、太陽に近い4惑星は主に岩石からなる岩石惑星(地球型惑星)です。水星の密度は地球に次いで高く、半径2074kmにも及ぶ大きな金属核があるとみられています。核の半径は惑星全体の85%にもなります。
クレーターに覆われた表面。昼夜の温度差は600℃以上
水星表面には数多くのクレーターが存在しています。水星には大気がほとんどないため、一度できたクレーターは風化によって消えることがありません。またやはり大気がないために、小さな隕石も燃え尽きることなく表面に衝突してクレーターを作ります。水星で最大の衝突地形は直径1550kmの「カロリス盆地」です。
ちなみに水星のクレーターには画家や作家、音楽家など、世界の芸術家にちなんだ名前が付けられています。「ホクサイ(葛飾北斎)」や「バショウ(松尾芭蕉)」「ゼアミ(世阿弥)」など、日本人の名前にちなんで名付けられたクレーターも多数存在しています。(参考)日本人にちなむ名前が付けられた水星のクレーターの一覧
水星表面にはまた、「リンクルリッジ」と呼ばれる断崖地形が存在し、中には長さ数百kmに及ぶものもあります。これは水星の形成後、長い時間が経過する中で惑星内部が冷えて収縮したことで生じた地形です。
太陽に近いため、水星の表面温度は昼側では430℃に達します。ただし水星には大気がなく熱を保てないため、夜側ではマイナス180℃まで下がり、昼夜の温度差は600℃以上にもなります。北極や南極のクレーター内で、太陽光が全く当たらない永久影の部分には、水の氷が存在するかもしれないとみられています。
水星探査機
これまで水星を観測した探査機は、いずれもNASA(アメリカ航空宇宙局)のマリナー10号とメッセンジャーの2機だけです。
1973年11月3日に打ち上げられたマリナー10号は、1974年3月と9月、75年3月の3回にわたり水星に接近しつつ観測を行いました。マリナー10号の観測では、水星表面の45%を撮影することができました。
一方、メッセンジャーは水星全体の観測を行いました。2004年8月3日に打ち上げられたメッセンジャーは、2011年3月18日に水星を周回する軌道に入り、2015年4月30日にミッションを終了するまで観測を続けました。
現在、日欧共同の水星探査機ベピコロンボが水星に向かっています。ベピコロンボは、JAXAの水星磁気圏探査機「みお」(MMO:Mercury Magnetospheric Orbiter)と、ESAの水星表面探査機(MPO:Mercury Planetary Orbiter)という2機のオービターで水星の観測を行うミッションです。2018年10月に打ち上げられたベピコロンボは、2025年後半に水星へ到着する予定です。