火星のタルシス地域には「タルシス三山」と呼ばれる3つの巨大火山が並んでいます。そのうちの1つ、最も南にあるアルシア山では、頂上付近から風下側に非常に長い雲がかかることがあります。
アルシア山は火星の赤道のすぐ南側にある高さ20kmほどの火山です。火星の南半球の春以降、その山の頂上付近から何百kmも伸びる水の氷の雲が毎日のように現れては消えていきます。火星の低緯度地域で、アルシア山は雲が見られる唯一の場所です。
この画像は、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の火星探査機マーズ・エクスプレスに搭載されているモニタリング用カメラVMC(Visual Monitoring Camera)で、2020年10月10日に撮影されたものです。アルシア山の西側に1500km伸びる白い雲が映し出されています。
なおVMCは、もともとマーズ・エクスプレスに搭載されていた着陸機ビーグル2の分離をモニタリングするためのカメラでした(着陸は失敗しました)。2007年以降は科学観測のために再利用されています。
こちらはマーズ・エクスプレスの高解像度ステレオカメラで撮影された、アルシア山に現れる雲のようすです。画像に映っている雲は915kmの長さに及んでおり、火星の表面に影を落としています。この画像は2018年9月21日に撮影されました。
なおアストロピクスで以前紹介した、別のときにVMCで撮影された同様の雲の画像はこちらの記事をご覧ください。
(参照)ESA