
この画像に映っているのは、太陽系の外からやってきた恒星間天体アトラス彗星(3I/ATLAS)です。ハワイ島、マウナケア山頂にあるジェミニ北望遠鏡で撮影されました。
2025年7月に発見されたアトラス彗星は10月以降、太陽の向こう側に回っていたため地球から観測することができませんでした。画像は、太陽の向こう側から再び姿を現した後の11月26日に、ジェミニ北望遠鏡のジェミニ多天体分光器(GMOS)で撮影されたものです。
ニ原子炭素により緑がかった色合いをしている
画像は青、緑、オレンジ、赤の4種類のフィルターで撮影された4枚の画像を合成して作られました。撮影している間、望遠鏡は彗星を追いかけているため、背景の星々は色ごとに移動して見えています。
9月に南米チリにあるジェミニ南望遠鏡で撮影されたアトラス彗星は赤みを帯びた色合いをしていました。今回のジェミニ北望遠鏡の画像では、やや緑がかった色合いをしています。彗星のコマのガスに含まれる、2つの炭素原子が結合したニ原子炭素(C2)が緑色の波長の光を発するためです。
画像は「Shadow the Scientists」という、アウトリーチ向けの観測プログラムで撮影されました。画像を掲載するNOIRLab(アメリカ光学・赤外天文学研究所)のウェブページによれば、このプログラムは世界中の学生を招待し、最先端の望遠鏡で研究者とともに宇宙を観測するアウトリーチ活動とのことです。
アトラス彗星は2025年7月1日、ATLAS(小惑星地球衝突最終警報システム)での観測によって最初に報告されました。2017年のオウムアムア(1I/ʻOumuamua)、2019年のボリソフ彗星(2I/Borisov)に次ぐ3例目の恒星間天体です。太陽を楕円軌道で周回する彗星とは異なり、アトラス彗星は双曲線軌道で運動しています。太陽に最接近した後は2度と戻ってくることはありません。
(参考)
ジェミニ南望遠鏡がとらえた恒星間天体アトラス彗星(3I/ATLAS)
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Image Credit: International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA/B. Bolin; Image Processing: J. Miller & M. Rodriguez (International Gemini Observatory/NSF NOIRLab), T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF NOIRLab), M. Zamani (NSF NOIRLab)
(参照)NOIRLab

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