光速の1%の速度で広がる、2つの大質量星の周りの塵の「殻」 ウェッブ望遠鏡が撮影 | アストロピクス

光速の1%の速度で広がる、2つの大質量星の周りの塵の「殻」 ウェッブ望遠鏡が撮影

この画像はジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が中間赤外線でとらえたもので、「ウォルフ・ライエ140(WR 140)」という天体と、その周辺に幾重にも広がる塵の「殻」が映っています。ウォルフ・ライエ140は、2つの大質量星が細長い楕円軌道を描いて周回する連星系です。地球から約5000光年の距離にあります。

ウォルフ・ライエ140では、2つの星が接近した際に、両方の星から吹き出した恒星風が衝突して圧縮され、炭素に富んだ塵が形成されます。ウェッブ望遠鏡の観測により、その塵の殻が一定の間隔で周囲に広がっていることが明らかになりました。2つの星は8年ごとに最接近する際の数か月間だけ、恒星風によって塵を発生させます。画像左上側に殻がないのはそのためです。

スポンサーリンク

塵の殻は光速のほぼ1%で広がっている

こちらは、2022年7月(左)と2023年9月(中央)に撮影された画像を並べたものです。右の枠内は、2022年の画像の「a」の三角と、2023年の「b」の三角の部分を並べて表示したものです。塵の殻はすべて、光速のほぼ1%に相当する秒速2600km以上の速度で連星系から遠ざかっており、ウェッブ望遠鏡の画像でも、わずか1年で殻が移動していることがわかります。

ウェッブ望遠鏡の観測では17の殻が検出されており、最も古い殻は130年以上も前のものになります。それより古い殻は暗すぎて検出されていません。ウォルフ・ライエ140では今後数十万年間、何万にも及ぶ殻が形成されるとみられています。

ウォルフ・ライエ星は、太陽の少なくとも25倍以上の恒星が、寿命の終わりに近づいた天体です。最後には超新星爆発を起こすか、直接、ブラックホールに崩壊する可能性があります。

(参考)大質量星の連星が生み出した幾重もの塵のリングをウェッブ望遠鏡がとらえた

Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, E. Lieb (University of Denver), R. Lau (NSF NOIRLab), J. Hoffman (University of Denver)

(参照)Webb Space TelescopeESA/Webb