太陽コロナを加熱するナノフレアを発見か!? | アストロピクス

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太陽コロナを加熱するナノフレアを発見か!?

明るい小さなループ構造のクローズアップ。各フレームは、左のフレーム内の枠内の領域を示しています。右端のフレームは最もズームインしたもので、ナノフレアかもしれない現象が映っています。Credit: NASA/SDO/IRIS/Shah Bahauddin
明るい小さなループ構造のクローズアップ。各フレームは、左のフレーム内の枠内の領域を示しています。右端のフレームは最もズームインしたもので、ナノフレアかもしれない現象が映っています。Credit: NASA/SDO/IRIS/Shah Bahauddin

太陽の上層大気「コロナ」を超高温に加熱する候補の一つと長年にわたり考えられてきた「ナノフレア」が発見されたかもしれません。コロラド大学のShah Bahauddin氏らによって、ナノフレアが発生してからコロナを加熱するまでのプロセスをとらえたかもしれないとする研究が発表されました。

太陽表面の温度は6000度ほどですが、上層大気であるコロナは数百万度もの高温になっています。何がコロナをそれほどまで加熱しているのかは大きな謎として長年研究されてきました。太陽表面では「フレア」と呼ばれる爆発現象が発生しますが、ナノフレアは通常のフレアよりはるかに小さな現象で、コロナを加熱する候補として考えられているものです。

Bahauddin氏は「ナノフレアがどのような指紋を残すのか、何を探せば良いのかということは理論的に分かっています」と言います。観測したものがナノフレアかどうかを判断するには、少なくとも二つの点を確認する必要があります。一つは磁気リコネクションで高温になっていること。もう一つは上空のコロナを加熱していることです。磁気リコネクションとは磁力線がつなぎ変わる現象のことで、磁気エネルギーが解放され、比較的低温のプラズマを一気に超高温にすることができます。

Bahauddin氏はもともと、ナノフレアについて考えていたわけではありませんでした。博士課程の学生だったころ、Bahauddin氏は超高温のコロナの直下の層で明滅するものに気づき、幅100kmほどの小さな明るいループを調べることにしました。

そしてBahauddin氏はNASA(アメリカ航空宇宙局)の太陽観測衛星IRISが撮影した画像から、二つの事実を発見しました。一つは、これらのループの温度が周囲よりも数百万度も高くなっていることです。そしてもう一つは、ケイ素のような重い元素が、酸素のような軽い元素よりもはるかに高温・高エネエルギーであることです。軽いボールを押すと、重いボールよりも遠くに転がるはずです。しかし実際に起きていることは逆だったのです。

Bahauddin氏は数年間にわたりシミュレーションを行い、さまざまな加熱メカニズムを検証しました。そして軽い元素より重い元素を加熱するメカニズムは磁気リコネクションであるという結論に至りました。

そのシミュレーションでは、非常に限られた条件の下でしか、そのようなことが発生しないことが示されていました。「この現象が発生するには特定の温度が必要で、またケイ素と酸素の比率が適切であることが必要」(Bahauddin氏)でした。ただ驚くべきことに、太陽の条件はシミュレーションとよく一致していたのです。

Bahauddin氏はその後、太陽観測衛星SDOのデータから、小さなループが現れた直後、その真上に超高温プラズマが出現することを発見しました。小さなループが「たしかに温度を上昇させ、コロナにエネルギーを運んでいるのです」(Bahauddin氏)

Bahauddin氏はコロナに同じような効果をもたらす小さなループを10例発見しています。ただBahauddin氏はまだ、それらを「ナノフレア」とは呼んでいません。ナノフレアがコロナを加熱するという理論の観点からは、そのような現象が頻繁に、太陽の至るところで発生していることを示すことが重要です。

「私たちは、低いところにある低温の構造が、実際に超高温プラズマをコロナへ供給できることを示しました。私にとってはそれが最も素晴らしいことです」とBahauddin氏は語っています。

(参照)NASA