太陽を観測するための衛星ソーラー・オービターが、アトラス彗星(C/2019 Y4)の尾を観測することになりました。
ソーラー・オービターは、2020年2月10日に打ち上げられたESA(ヨーロッパ宇宙機関)の太陽探査衛星です。ソーラー・オービターは現在、金星と水星の軌道の間で太陽を周回しています。6月15日には太陽から約7700万kmの地点で初めての近日点通過を迎えます。
一方、アトラス彗星は2019年12月28日に発見され、5月には肉眼でも観測できるようになるのではないかと期待されていた彗星です。しかし4月上旬以降、核が分裂して暗くなり、夜空で見ることはかないませんでした。このアトラス彗星は5月31日に近日点(太陽から約3700km)を通過します。
彗星が太陽に近づくと「塵の尾」と「イオンの尾」があらわれます。それらの尾の中を、ソーラー・オービターが通過することが分かり、予定にはなかった観測が行われることになったのです。
ソーラー・オービターは5月31日〜6月1日にアトラス彗星のイオンの尾を、6月6日に塵の尾を通過します。もともとソーラー・オービターは6月15日の近日点通過に向けて試運転を完了する予定でしたが、5月上旬にアトラス彗星の尾を通過することが分かり、急遽、彗星の尾の観測に向けた準備が進められることになりました。
彗星の核は氷と塵からできており「汚れた雪玉」ともいわれます。灼熱の太陽を観測するための衛星が雪玉の観測を行うという、なんとも興味深い展開になりました。ソーラー・オービターに搭載されている10台の装置のうち、4つの装置は彗星の尾の観測にも適しているとのこと。どのような観測結果がもたらされるのか、想定外の結果も含めて期待されています。