32億光年先の銀河団の重力レンズで、さらに遠方の超新星が見えた ウェッブ望遠鏡が観測 | アストロピクス

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32億光年先の銀河団の重力レンズで、さらに遠方の超新星が見えた ウェッブ望遠鏡が観測

この画像はジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がとらえたもので、巨大な銀河団「RX J2129」が映っています。RX J2129は、みずがめ座の方向、約32億光年の距離にあります。

RX J2129の「重力レンズ効果」によって、遠方にある1つの銀河が3か所に分かれて見えています。また重力レンズ効果によって弧を描くように引き伸ばされている銀河も映っています。重力レンズ効果は、銀河団の巨大な質量によって空間がゆがむことで生じます。空間のゆがみが、レンズのように光の経路を曲げるのです。

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3つに分かれた銀河の像の1つに超新星が映っていた

重力レンズ効果によって3つに分かれて見えている銀河で、超新星が発見されました。この超新星はIa型超新星ではないかと見られています。Ia型超新星は、高温・高密度の白色矮星が最期に見せる激しい爆発現象です。明るさの最大値がどれもほぼ一定であることから、銀河までの距離を測定するために使われます。

こちらの画像の白枠は、重力レンズ効果で3つに分かれた同じ銀河を示しています。右の3つは白枠内の拡大です。

銀河団の質量は均一に分布しているわけではなく偏りがあるため、空間の歪み方も場所によって異なります。そのため奥にある銀河からの光がたどる距離は経路によって異なります。長い経路をたどった光は遅れて地球に到達するのです。

画像右中央の白枠内の画像には、「AT 2022riv」と名付けられた超新星(突発天体)が映っています。上下の画像は、それよりも光が長い経路をたどってきたため、中央の画像より後の時期の銀河が見えています。下は約320日後、上は約1000日後の銀河の像で、どちらもすでに超新星は見えなくなっています。

Ia型超新星の明るさがほぼ均一であることから、RX J2129の重力レンズが背景の天体をどれほど拡大しているのか、そしてそこから銀河団の質量がどれくらいなのかを知ることができます。

画像はウェッブ望遠鏡のNIRCam(近赤外線カメラ)で撮影されました。ウェッブ望遠鏡のウェブページでは毎月、「Picture of the Month(今月の1枚)」の画像を公開しています。この画像は2023年2月のPicture of the Monthとして紹介されたものです。

Image Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, P. Kelly

(参照)ESA/Webb