地球〜月間の80倍の距離からの高解像度ネコ映像 NASAが送信実証実験に成功 | アストロピクス

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地球〜月間の80倍の距離からの高解像度ネコ映像 NASAが送信実証実験に成功

一見すると宇宙とは関係なさそうなネコが映ったこの動画、実は宇宙空間を航行中の小惑星探査機サイキ(Psyche)から送られてきたものです。もちろん宇宙でネコを撮影したものではなく、打ち上げ前に探査機にアップロードされた動画です。

この高解像度映像は2023年12月11日、約3100万km離れたところから地球に送られてきました。NASA(アメリカ航空宇宙局)の深宇宙光通信(Deep Space Optical Communications、DSOC)実験において、深宇宙から高解像度動画を送信、ストリーミングする実証実験の一環です。なお約3100万kmというと、地球から月までの距離(38万4400km)の約80倍に相当します。

サイキからは、近赤外線レーザーを使って15秒の映像が送られました。データが地球に到達するまで101秒、ビットレートは最大267Mbpsという高速なものでした。地球ではアメリカ、カリフォルニア州サンディエゴにあるパロマー天文台のヘイル望遠鏡で受信、ダウンロードされました。そこからインターネット経由でカリフォルニア州パサデナにあるNASA・JPL(ジェット推進研究所)に「ライブ」で送信され、リアルタイムで再生されました。

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電波と比べ送信速度は100倍にも

NASAによれば、サイキに搭載されているレーザー通信装置は、他のミッションで使われている電波によるシステムと比べ10〜100倍の速度でデータを送信できるように設計されているとのことです。DSOC実験は、将来の火星有人探査も見据えたものになっています。

サイキでのDSOCの技術実証はまず、11月14日に約1600万kmの距離から行われました。その後、12月4日には62.5Mbps、100Mbps、267Mbpsでの通信を実証し、合計1.3テラビットのデータがダウンロードされました。そのデータ量は、1990〜94年に金星を周回しつつ観測を行ったマゼラン探査機のミッション全体のデータ量(1.2テラビット)を上回っています。

こちらはJPLのミッション支援エリアのコンピューター画面に映し出された映像の静止画像です。ちなみに映像に映っているネコは、JPL職員の飼い猫「テイターズ(Taters)」とのことです。

なお、サイキのミッションについては次の記事をご覧ください。→「金属が豊富な小惑星を目指す探査機サイキ

Credit: NASA/JPL-Caltech

(参照)JPL