地球観測衛星が見た月食中の月 | アストロピクス

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地球観測衛星が見た月食中の月

2022年5月中旬、アメリカやヨーロッパで皆既月食が見られました。その際、ふだんはほぼ常に地球を監視している2つの地球観測衛星が月に向けられました。

画像はランドサット8の熱赤外センサー(TIRS)とランドサット9のTIRS-2が赤外線で皆既月食時の月をとらえたものです(いちばん上と右下は地上から撮影された可視光画像)。明るい部分は温度が高く、暗い部分は温度が低くなっています。なお画像のコントラストは、各画像の最低温度と最高温度に基づいて調整されています。

月面の表面温度は、皆既月食が始まると1時間に100℃以上の割合で下がっていきました。皆既月食は5月16日3時29分〜4時53分(世界時)の間、続きました。画像の中段の3つは、ほぼ皆既月食の間に得られたものです。

温度が急速に低下するのは、月に厚い大気がないためです。ただTIRS観測装置科学者のDennis Reuter氏によれば、月面全体が細かいレゴリスの層で覆われていることも原因の一つとのことです。レゴリスの粒子の小さいことと低密度なことが、月面の熱を逃がすのに役立っているそうです。

また皆既月食中の画像では、月面の下の方でティコ・クレーターが明るく見えている、つまり周囲より相対的に温度が高いことがわかります。これはクレーター内に細かい粒子が少ないか、あるいはクレーター内の物質が熱伝導にすぐれているためである可能性があります。

月面は日照条件が同じであれば明るさが安定しているため、地球観測衛星の観測装置の校正に使われることがあります。ランドサット衛星も同様で、月に1度、校正のために月面に向けられます。今回の皆既月食時の月の観測は、その校正の際と同様の手順で実施されました。

画像は、NASA Earth Observatoryで2022年7月5日の「Image of the Day(今日の1枚)」として紹介されたものです。

Image Source: NASA’s Earth Observatory

(参照)NASA Earth Observatory