2024年8月19日から20日(日本時間20日から21日)にかけて、木星氷衛星探査機JUICEが月と地球の重力を利用したスイングバイ(フライバイ)を実施し、予定通りに軌道を変更することに成功しました。月と地球とで連続してスイングバイを行ったのは史上初めてです。
JUICEはESA(ヨーロッパ宇宙機関)主導の木星探査計画で、日本も参加しています。2023年4月に打ち上げられ、現在は木星に向かって航行中です。
JUICEは8月19日21時15分(世界時、日本時間20日6時15分)に月に最接近、そのおよそ24時間半後の20日21時56分(世界時、日本時間21日6時56分)には地球に最接近しました。
この画像は、地球への最接近後の21日22時9分(世界時、日本時間7時9分)にJUICEのモニタリングカメラ1(JMC1)で撮影されました。北太平洋が映っており、地球の右端に北アメリカ大陸が少しだけ見えています。
こちらは地球への最接近前の20日21時48分(世界時、日本時間21日6時48分)にJMC1で撮影された画像。北太平洋が見えています。
この画像は地球から遠ざかりつつある21日0時53分(世界時、日本時間9時53分)にJMC1で撮影されたものです。中央下に地球が映り、左下に月が小さく見えています。
月でのスイングバイにより、JUICEの速度は太陽に対して秒速0.9km増加し地球へ向かいました。地球でのスイングバイにより、JUICEの速度は太陽に対して秒速4.8km減少し、金星へ向かう軌道に乗りました。月と地球でのスイングバイの前後で、およそ100度の方向転換を行いました。今回のスイングバイにより、燃料を100〜150kg節約できたとのことです。
こちらはアストロピクスでも昨日紹介した画像で、月でのスイングバイ時に撮影されたものです。(参考)木星氷衛星探査機JUICEがスイングバイ時にとらえた月
(参考)木星氷衛星探査機JUICE、科学観測用カメラで撮影した月と地球の高解像度画像を公開
科学機器のテストも実施
今回の月・地球でのスイングバイでは、科学機器のテストも行われました。月でのスイングバイ中は、JUICEに搭載されている10の科学機器全ての電源が入れられ、地球でのスイングバイ中は8つの科学機器が稼働しました。
このページで紹介している画像はいずれも、科学観測用のカメラではなく、探査機の機体などを監視するためのモニタリングカメラで撮影されたものです。スイングバイ中には科学観測用カメラ「JANUS」を使って高解像度画像も撮影されました。他の観測機器のデータも含め、後日公開される予定になっています。
今回のスイングバイにより、JUICEは2025年8月の金星でのスイングバイに向けて方向転換されました。金星スイングバイの後、JUICEは2026年8月と2029年1月に地球でのスイングバイを2度行い、2031年7月に木星へ到着する予定です。
スイングバイ時の映像(8月28日追記)
この動画は、JUICEの2台のモニタリングカメラで撮影した画像をもとに作成されたものです。前半は月でのスイングバイ、後半は地球でのスイングバイ時の映像になっています。
(参考記事)
木星氷衛星探査機JUICE、月と地球でスイングバイを実施へ
木星氷衛星探査計画「JUICE」 打ち上げ後の予定は? 何を探査する?
Image Credit: ESA/Juice/JMC; Acknowledgements: Simeon Schmauß & Mark McCaughrean