観測史上最大! 太陽に接近中の巨大彗星核のサイズが求められた

現在、太陽に接近中の巨大彗星バーナーディネリ・バーンスタイン彗星[C/2014 UN271 (Bernardinelli-Bernstein)]の大きさが、ハッブル宇宙望遠鏡の観測などから直径135kmほどと推定され、観測史上最大の核を持つ長周期彗星であることが確認されたとのことです。C/2014 UN271についてはアストロピクスでも昨年6月に紹介しましたが、そのときには直径は100〜200kmと推定されていました。

Credit: SCIENCE: NASA, ESA, Man-To Hui (Macau University of Science and Technology), David Jewitt (UCLA)、IMAGE PROCESSING: Alyssa Pagan (STScI)
Credit: SCIENCE: NASA, ESA, Man-To Hui (Macau University of Science and Technology), David Jewitt (UCLA)、IMAGE PROCESSING: Alyssa Pagan (STScI)

C/2014 UN271はまだ太陽から遠いにもかかわらず、核のまわりに「コマ」と呼ばれる大気をまとっています。核の大きさを求めるには、核とコマを区別する必要があります。研究チームはハッブル宇宙望遠鏡を用いて2022年1月8日に撮影。撮影画像(左)からコマのコンピュータモデル(中央)を差し引くことで核の画像(右)が得られました。さらにアルマ望遠鏡のデータを組み合わせることで核の大きさが推定されました。

C/2014 UN271は、2013〜19年にかけて行われた国際共同プロジェクト「ダークエネルギーサーベイ」のデータから、天文学者のペドロ・バーナーディネリ氏とゲイリー・バーンスタイン氏により発見されました(のちに2010年には観測されていたことが分かりました)。「JPL Small-Body Database Browser」によれば、C/2014 UN271の公転周期は約332万9000年、遠日点(太陽から最も遠ざかる点)は約4万4578天文単位(1天文単位は太陽〜地球間の距離に相当する約1億5000万km)となっています。

彗星C/2014 UN271と惑星(火星以遠)の公転軌道と、ハッブル宇宙望遠鏡による観測が行われた2022年1月8日時点での各天体の位置。JPL Small-Body Database Browserより。
彗星C/2014 UN271と惑星(火星以遠)の公転軌道と、ハッブル宇宙望遠鏡による観測が行われた2022年1月8日時点での各天体の位置。JPL Small-Body Database Browserより。

C/2014 UN271の公転軌道は、太陽系の惑星の軌道面に対してほぼ垂直になっています。ハッブル宇宙望遠鏡による観測が行われた2022年1月8日の時点で、C/2014 UN271は太陽から19.45天文単位の距離に位置していました。距離的には天王星とほぼ同じ距離です。2031年に太陽へ最も近づくときの距離(近日点)でも太陽から10.9天文単位で、土星よりやや遠い距離までしか近づかず、地球に衝突するようなことはありません。

この彗星は「オールトの雲」からやってきたと考えられています。オールトの雲は、太陽系を球殻状に取り囲む、長周期彗星の巣とみられる領域です。オールトの雲の内縁は2000〜5000天文単位、外縁は1光年ほど先まで広がっているとみられていますが、直接観測されたことはありません。太陽系形成の初期に、木星や土星などの巨大惑星の重力の影響で小天体が外へと放り出されたことで形成されたと考えられています。C/2014 UN271は、オールトの雲に属する天体の大きさの分布や「雲」全体の質量などについての手がかりを与えてくれると期待されています。

(参照)Hubblesite