画像は、すばる望遠鏡でとらえたもので、白枠内に映っているのはヘルクレス座の方向、4億3000万後年の距離にある「HSC J1631+4426」という銀河です。この銀河の年齢は、およそ1000万歳ほどとみられています。総質量は太陽の80万倍ほどで、天の川銀河にある星団1つ分ほどの質量しかない非常に軽い銀河です。
酸素などの重元素は星の中で作られます。そのため生まれたばかりの銀河には、重元素はほとんど含まれていないと考えられています。宇宙が誕生した直後には、そのような形成初期の銀河がたくさんあったと考えられていますが、標準的な宇宙論モデルによると、現在の宇宙にも形成初期の銀河が存在する可能性があると予言されていました。
元東京大学大学院の小島崇史博士らの研究チームは、超広視野主焦点カメラ「ハイパー・シュプリーム・カム(Hyper Suprime-Cam、HSC)」 で撮影した画像データから、形成初期の銀河を探すことにしました。HSCは非常に広い範囲を高解像度で観測できるため、たくさんの銀河が映し出されます。今回の研究では、4000万個もの天体の中から生まれたばかりの銀河を探し出す必要がありました。
そこで研究チームは機械学習の手法を新しく開発し、生まれたばかりの銀河の候補となる天体を27個まで絞り込みました。それらの天体に含まれる元素の量を調べたところ、HSC J1631+4426の酸素含有率が太陽の1.6%しかなく、これまで報告された中で最も低いことが判明しました。これほどの酸素含有率の低さは、銀河を構成するほとんどの星がごく最近作られたことを示しています。
HSC J1631+4426では星が活発に形成されていること、また1000万年ほどの短期間で大半の星ができたとみられることから形成初期の銀河と結論づけられました。
今回の研究によって、標準的な宇宙論モデルで考えられていた形成初期の銀河が、現在の宇宙に存在することが分かりました。また加速膨張する宇宙では近い将来、新しい銀河が誕生しなくなると予想されており、今回発見された銀河は宇宙の歴史の中で最後の世代の銀河かもしれないとのことです。
Image Credit: 国立天文台/Kojima et al.
(参照)すばる望遠鏡、東京大学宇宙線研究所