宇宙にある物質には、星や銀河を作る普通の物質(陽子や中性子など)と、いまだ正体不明の暗黒物質(ダークマター)とがあります。ダークマターは謎だらけですが、「バリオン」と呼ばれる普通の物質にも大きな謎が存在しています。
宇宙背景放射の観測結果などから、宇宙が始まったころにどれだけの物質があったのかは分かっています。しかし現在の宇宙では、存在するはずの物質が半分も見つかっていないのです。行方不明のその物質は「ミッシングマター」「ダークバリオン」などと呼ばれています。
そのミッシングマターは銀河間空間にごく薄く広がっているのではないかとみられていましたが、これまで検出することはできませんでした。
今回、「高速電波バースト(FRB)」という現象を利用して、銀河間空間にあるミッシングマターを検出したという研究が発表されました。FRBは、わずか数ミリ秒ほど電波が突発的に放射される現象です。発生する原因はまだ分かっていません。冒頭の画像は、遠方の銀河でFRBが発生したところを描いた想像図です。
遠方の銀河で発生したFRBが地球に向かってくるとき、何もない空間を通過するときは全ての波長が同じスピードで移動します。しかしミッシングマターがあると、波長によってスピードが遅くなります。それぞれの波長が地球に届くタイミングを測定することで、途中でどれくらいのミッシングマターがあったのかが計算されました。
研究チームはオーストラリアのASKAP電波望遠鏡を使って、6つのFRBの検出と位置の特定、波長間の遅れの測定などを行いました。ASKAPは満月の約60倍ほどの広い視野を持つ電波望遠鏡です。またESO(ヨーロッパ南天天文台)のVLT(超大型望遠鏡)などの光学望遠鏡を用いて、銀河までの距離を調べました。
FRBが発生した銀河から地球までの距離と、地球に到達したFRBの波長間の遅れを使って、ミッシングマターの密度が割り出されたのです。
この映像には、FRBを利用してどのようにミッシングマターを検出したのかがまとめられています。Credit: ICRAR with some footage supplied by CSIRO/Alex Cherney, ESO/y. Beletsky and ESO/R. Wesson.
Image Credit: ICRAR