膨張した赤色巨星にかつて飲み込まれたと見られるにもかかわらず、生き残っている惑星が発見されました。
その惑星「こぐま座8番星b(8 UMi b)」は、主星(こぐま座8番星)から0.46天文単位(1天文単位は太陽〜地球間に相当する距離)のところを公転する巨大ガス惑星です。
ハワイ大学のMarc Hon氏らの研究チームは、NASA(アメリカ航空宇宙局)の太陽系外惑星探索衛星TESSによる主星の振動の観測から、この主星の中心でヘリウムの核融合反応が起きていることを発見しました。これは、この主星がかつて赤色巨星として巨大に膨張していたことを示しています。
主星の現在の大きさは、惑星の公転距離の10分の1ほどですが、それ以前には公転距離の1.5倍ほど(0.7天文単位)まで膨れ上がっていたと考えられます。そうなると、膨張した赤色巨星に惑星は飲み込まれていたはずですが、実際に惑星は生き残っています。
こぐま座8番星bは、2015年にドップラー法(惑星の公転による主星のふらつきを検出する方法)によって発見されました。研究チームはハワイ、マウナケア山頂付近にあるケック望遠鏡とカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡(CFHT)を使って追加の観測を行い、この惑星の93日間のほぼ円形の軌道が安定しており、主星のふらつきが惑星によるものであることを確認しました。
惑星はなぜそこにあるのか
主星から0.46天文単位のところを公転する、このような巨大ガス惑星は、主星から遠いところで形成されたのちに、主星の近くへ移動してきたと考えられています。しかしヘリウムの核融合反応をする赤色巨星の段階は長続きしないことを考えると、そのようなシナリオで惑星が生き残ることは難しいとのことです。
研究チームは、こぐま座8番星bが生き残ったシナリオとして2つの仮説を考えています。1つは、実は惑星が飲み込まれる危険に直面したことがなかったというものです。主星はもともと連星系で、伴星との合体により惑星を飲み込むほど膨張できなかった可能性があります。
もう1つの可能性は、こぐま座8番星bが比較的最近になって形成されたとするものです。2つの恒星の衝突によってガス雲が発生し、そこからこの惑星が誕生したというのです。
「ほとんどの星は連星系をなしていますが、それらの周囲でどのように惑星が形成されるのか、完全には理解されていません」とHon氏は語ります。「したがって、連星の相互作用のおかげで、進化した恒星のまわりには実際により多くの惑星が存在する可能性はあり得るでしょう」
Image Credit: W. M. Keck Observatory/Adam Makarenko
(参照)University of Hawaii、W.M.Keck Observatory、University of Sydney