火星のかつての大洪水によって姿を現したはるか昔のクレーター | アストロピクス

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火星のかつての大洪水によって姿を現したはるか昔のクレーター

この画像は、NASA(アメリカ航空宇宙局)の火星探査機マーズ・グローバル・サーベイヤーが、カセイ谷(Kasei Valles)をとらえたものです。1998年6月4日に撮影されました。火星の地質学的な歴史の複雑さを垣間見せてくれる画像です。中央に見える円形の地形は、かつて地下に埋もれていた直径6kmのクレーターです。

カセイ谷は、比較的平坦な平原で10億年以上前に発生した大洪水によって刻まれた峡谷です。画像に映るクレーターは、平原に埋もれていたものがその大洪水によって部分的に掘り起こされたものです。

これらの画像はNASAの火星探査機バイキング1号が撮影したものです。1枚目はカセイ谷の広範囲をとらえたもので、白枠の部分が2枚目の画像や冒頭の画像の範囲を示しています。2枚目の画像の白枠は冒頭の画像の範囲です。2枚目の画像を見ると、埋もれていたクレーターがメサ(テーブル状の台地)の端にあることがわかります。クレーターの縁が高いために洪水が乗り越えられず、また洪水が短時間だったためクレーターの縁が決壊しなかったとみられます。

このクレーターはおそらく35億年前に隕石衝突によって形成され、その後、平原の下に埋もれてしまいました。崖の縁がシャープであることなどから、メサを作る岩盤は硬い岩石からなることがわかります。しかし埋もれるプロセスがゆっくりだったため、クレーターは形を保ったまま埋もれたようです。

またカセイ谷をつくった洪水やメサの崖の後退など、クレーターが露出したプロセスも穏やかなものだったことから、クレーターの形がよく保存されたまま姿を現したとみられます。

マーズ・グローバル・サーベイヤーは1996年11月に打ち上げられ1997年9月に火星に到着しました。冒頭の画像は到着1年目に撮影されたものです。マーズ・グローバル・サーベイヤーは2006年11月まで観測を続けました。

Main Image Credit: NASA/JPL/Malin Space Science Systems

(参照)Planetary Photojournal