木星の4大衛星の1つエウロパは、表面を氷の地殻でおおわれています。その氷の地殻の下には広大な海が存在していると考えられています。チェコ、カレル大学のMarie Běhounková氏らの研究チームは、そのエウロパの地下海の海底下のマグマ活動が、極域に集中していると予測する研究を発表しました。
エウロパの内部は、木星の重力の影響でたわむことで高温になっていると考えられています。Běhounková氏らは木星の重力によってエウロパの岩石部分がどのようにたわんで熱が発生するかをモデル化しました。その結果、最も多く熱が生じる極域で、マグマ活動が最も発生しやすくなると予測しました。
地球の深海底にある熱水系では、海水が高温のマグマと接触すると、相互作用によって化学エネルギーが生じます。深海底の生命活動は太陽エネルギーではなく、そのような化学エネルギーに支えられています。エウロパに火山活動が見つかれば、エウロパの地下海に生命の居住可能な環境があることを支持する傍証の一つになる可能性があります。
「今回の発見は、エウロパの地下海が生命の発生に適した環境である可能性を示す新たな証拠を提供するものです」とBěhounková氏は言います。「エウロパは、数十億年にわたり火山活動が続いている可能性があるまれな太陽系天体の一つであり、また地球以外で大量の水と長期間にわたるエネルギー源を保持する唯一の太陽系天体である可能性があります」
NASA(アメリカ航空宇宙局)では2024年の打ち上げを目指し、「エウロパ・クリッパー」ミッションを進めています。エウロパ・クリッパーは2030年に木星へ到着したのち、木星を周回しながらエウロパに約45回接近し、エウロパの地図を作成したり組成を調査したりします。またエウロパ・クリッパーでは重力や磁場の測定も行います。それにより今回の予測が検証できるかもしれません。
(参照)JPL