ESA(ヨーロッパ宇宙機関)のユークリッド宇宙望遠鏡が撮影した最初のテスト画像が公開されました。
2023年7月1日に打ち上げられたユークリッド望遠鏡は、7月28日に観測を行う場所である第2ラグランジュ点に到着しました。今回公開された画像は、機器をチェックし、今度どのように微調整をしていくかを確認するために撮影されたものです。チェック用の画像ではあるものの、非常に鮮明に映し出されているのがわかります。
ユークリッド望遠鏡は、100億光年先までの銀河の形状や位置、距離を測定し、これまでで最大かつ最も正確な宇宙の3次元マップを作成します。それによりダークマター(暗黒物質)やダークエネルギー(暗黒エネルギー)の謎に迫ります。その目的のため、ユークリッド望遠鏡にはVIS(可視光カメラ)とNISP(近赤外線分光計および測光計)という2つの観測機器が搭載されています。今回、その2つの観測機器で撮影された画像がそれぞれ公開されました。
可視光で撮影した画像
こちらはVISで撮影した画像です。VISは可視光(550〜900nm)で数多くの銀河の鮮明な画像を撮影し、銀河の形状を測定します。この画像には渦巻銀河や楕円銀河のほか、さまざまな距離にある星や星団などが映し出されています。画像処理はほぼなされていないため、宇宙線による光のすじなどがみられます。
こちらの画像は、左がVISの視野戦隊を示したものです。右の拡大画像では、1つの検出器が4つの部分に分かれていることが示されています。
赤外線で撮影した画像
ユークリッド望遠鏡のもう1つの観測機器であるNISPには、2つの役割があります。1つは赤外線(900〜2000nm)で銀河を画像化すること、もう1つは銀河のスペクトルを測定することです。スペクトルにより赤方偏移を測定することで、銀河までの距離を求めます
NISPでは、天体からの光は測光フィルタあるいは分光グリズムを通過して検出器に到達します。画像は測光フィルタの1つを通して撮影されたものです。上で紹介したVISの画像と同じく、ほとんど処理されていないので不要な情報も残っています。
なおグリズム(grism)は、回折格子(grating)とプリズム(prism)を組み合わせた、分光を行うための光学素子です。「grism」はgratingとprismを組み合わせた造語。
こちらの画像の左側は、NISPの視野全体を示しています。
こちらはグリズムを通してNISPで撮影したものです。垂直に伸びる線は、1本がそれぞれ1つの銀河や星に対応しています。
ユークリッド望遠鏡は今後、まだ2か月間ほどはテストとチェックが続けられる予定です。その後、本格的な科学観測がスタートします。メインミッションは6年間が予定されており、全天の3分の1の領域が観測されることになります。
Image Credit: ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA, CC BY-SA 3.0 IGO
(参考記事)ユークリッド宇宙望遠鏡 銀河の精密な3Dマップを作り宇宙の「暗黒」の解明を目指す
(参照)ESA