アポロ計画以来、半世紀ぶりに人類が月に向かうアルテミス計画。その第2段階にあたるアルテミス2ミッションの打ち上げがいよいよ近づいてきました。2026年1月25日現在、早ければ2月6日の打ち上げが予定されています。
アルテミス2は、新型ロケット「SLS(Space Launch System)」とオリオン(オライオン)宇宙船を用い、4人の宇宙飛行士を乗せて月の向こう側をまわって地球へ帰還する有人飛行試験ミッションです。2022年に行われた無人飛行試験「アルテミス1」の成功をうけ、今回は実際に人間が搭乗して、深宇宙での生命維持システムや宇宙船の操縦性能を検証します。このミッションの成功は、続くアルテミス3での月面着陸に向けた重要なステップとなります。
アルテミス2での飛行は約10日間の予定です。打ち上げから帰還まで、その10日間にどんなことが起きるのか、NASAの資料をもとに紹介します。
アルテミス2ミッションでの10日間の飛行の日程

こちらはNASA(アメリカ航空宇宙局)が公開した、アルテミス2の飛行ルートの概略を示した図です。この図に沿って、ミッションの日程を紹介します。なお原稿中の(1)(2)などは、図の中の丸つき数字に対応しています。
オリオン宇宙船を搭載したSLSロケットは、ケネディ宇宙センターの39B発射台から打ち上げられます(1)。ロケットが大気圏外に出ると、固体ロケットブースターが切り離され、続いて宇宙船のサービスモジュールを保護するパネルと、緊急脱出システム(LAS)が分離されます(2)。LASは、ロケットの上昇時に緊急事態が発生した際に宇宙飛行士が乗ったカプセルを逃がすためのシステムです。
宇宙空間に到達すると、ロケットのコアステージはメインエンジンが停止したのち分離されます(3)。オリオン宇宙船が、初期の軌道での遠地点(地球から最も遠い点)に達すると、ロケットの第2段にあたるICPS(Interim Cryogenic Propulsion Stage)のエンジンを噴射し、近地点(地球に最も近い点)を高度160kmまで上昇させます(4)。それにより宇宙船とICPSは安定した地球低軌道に入ります。
およそ1時間後、ICPSは近地点で噴射し、宇宙船を高地球軌道へ上昇させます(5)。ここから23時間、宇宙船が比較的地球の近くにいる間に、宇宙船のチェックが行われます。
役目を終えたICPSはオリオン宇宙船から切り離されます(6)。その後、分離されたICPSに対して、オリオン宇宙船で近づいたり周回したりといった実証試験が行われます。これは将来のミッションにおいて、宇宙船どうしのドッキングに向けての試験になります。また手動モードでオリオン宇宙船を操縦できることを確認する機会にもなります。なお、画像の右側のオレンジ色の枠内にあるのは、その実証試験の際のシークエンスです。
その後、オリオン宇宙船はICPSから離れていきます(7)。ICPSは大気圏に再突入し、太平洋上空で燃えつきます。
飛行第1日目の終わりに、オリオン宇宙船を適切な軌道へ乗せるため、追加のエンジン噴射を実施します(8)。飛行第2日目に行われる、月へ向かう月遷移軌道への投入に備えるものです。
飛行第2日目に、オリオン宇宙船のメインエンジンを噴射して、月に向かう軌道に乗り、最終的に乗組員を地球に帰還させて着水させるための自由帰還軌道に乗ります(9)。自由帰還軌道に乗ると、エンジンなどを噴射しなくても、月の重力を利用して月の向こう側を回って自然に地球まで戻ってくることができます。
往路では3度の軌道修正を行いつつ月へ向かいます(10)。飛行第4日目に、オリオン宇宙船は月の重力圏に入ります。
飛行第6日目に、オリオン宇宙船は月に最接近します(11)。最接近時の月までの距離は6400km〜1万kmほどで、打ち上げ時期によって異なります。最接近の前後は地球から見て月の裏側を飛行するため、30〜50分間(打ち上げ時期によって異なる)、地球と通信できない状況になります。また飛行第6日目には、人類が地球から離れて最も遠くまで行ったアポロ13号の距離の記録を上回ることになります。
復路でも3度の軌道修正を行いつつ地球へ向かいます(12)。飛行第10日目、3度目かつ最後の軌道修正噴射を行い、その後、オリオン宇宙船のクルーモジュールとサービスモジュールを分離します(13)。クルーモジュールは宇宙飛行士が乗って地上へ帰還するカプセル部分で、サービスモジュールは推進や電力供給などを担うモジュールです。
クルーモジュールはその後、大気圏へ再突入(14)。パラシュートなどを使いながら降下していき海へ着水します(15)。着水したクルーモジュールは船で回収されます。
ミッションの飛行日程紹介映像
こちらはアルテミス2ミッションを紹介するNASAの映像です(Credit: NASA)。CGを使いながら打ち上げから帰還までが再現されています。ナレーションは英語ですが、字幕の翻訳機能なども利用しながらご覧ください。
アルテミス2では、リード・ワイズマン(Reid Wiseman)飛行士、ビクター・グローバー(Victor Glover)飛行士、クリスティーナ・コック(Christina H. Koch)飛行士、ジェレミー・ハンセン(Jeremy Hansen)飛行士の4人がオリオン宇宙船に搭乗します。ハンセン飛行士はCSA(カナダ宇宙庁)、他の3人はNASAの宇宙飛行士です。月まで飛行するクルーとしてコック飛行士は初の女性、グローバー飛行士は白人以外で初、ハンセン飛行士はカナダ初となります。
(参考)
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(参照)NASA

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