ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた、大質量星の起源を探るための“研究室” | アストロピクス

【Googleニュースでアストロピクスをフォローして新着記事をチェック!】

ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた、大質量星の起源を探るための“研究室”

大マゼラン銀河のタランチュラ星雲にある「LHA 120-N 150」という領域を、ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた画像です。LHA 120-N 150は、タランチュラ星雲の中心部から外れたところにある非常に小さな領域です。ピンク色のガスと塵の雲と、それを取り巻く大質量星が映し出されています。

大マゼラン銀河は、かじき座の方向、約16万光年の距離にあります。大マゼラン銀河はおそらく、かつて小マゼラン銀河と接近遭遇したことがあり、そのとき重力的な相互作用によって星形成が進みました。タランチュラ星雲はその名残の一つです。

理論モデルでは、大質量星は星団内で形成されるべきであることが示唆されています。しかし観測された大質量星のうちの10%は、単独で形成されていました。タランチュラ星雲には、星団の一員である大質量星が存在する一方で、孤立した大質量星も存在しており、そのような大質量星の形成の謎を調べるにはうってつけの研究室とでもいえる場所になっています。

天文学者はハッブル宇宙望遠鏡を使った観測を通じて、星雲に見られる孤立した星が最初から単独で形成されたのか、あるいはもともと星団内で生まれた後に、その星団から離れていったものなのかを見極めようとしています。ただ完全に形成される前の若い大質量星は密集した塵の塊に似ており、そのような研究は簡単ではありません。

LHA 120-N 150には、そのような天体が数十個含まれています。その中にはおそらく、若い恒星と塵の塊が含まれています。観測と解析によってLHA 120-N 150の詳細を明らかにすることで、大質量星形成の謎に迫るのに役立つだろうと期待されています。

Image Credit: ESA/Hubble, NASA, I. Stephens

https://www.spacetelescope.org/images/heic2004a/