巨大な銀河や銀河団などの重力によって、より遠方の天体からの光が曲がる現象を「重力レンズ」といいます。アインシュタインの一般相対性理論によると重力の正体は時空のゆがみです。大質量で重力の大きな天体の周囲では時空が大きくゆがむため、遠方の天体からの光が曲がるのです。
重力レンズを引き起こす大質量の銀河は1万個に1個しかないと見られており、その位置を知ることは簡単ではありません。サンフランシスコ大学のXiaosheng Huang氏らの研究チームは、そんな重力レンズを一挙に1210個発見したと発表しました。
研究チームは「DESI Legacy Imaging Surveys」という夜空をサーベイした膨大なデータセットから重力レンズを探しました。DESI Legacy Imaging Surveysでは、10億個以上の銀河からなるこれまでで最大の夜空の地図が作成され、2021年1月に最終版が公開されました。その膨大なデータを元に、研究チームは機械学習を利用することで1210個もの重力レンズを発見したのです。掲載した画像は、発見された重力レンズのうちの一部です。
重力レンズは、ダークマター(暗黒物質)の性質や、宇宙の年齢にも関わるハッブル定数など、宇宙の核心に迫るような問題を探るのにも役立ちます。しかしこれまでは知られている重力レンズの数が少なく、重力レンズを利用した研究には限界がありました。大量の重力レンズ候補を手にしたことで、研究者は今後、ハッブル定数のような宇宙論パラメーターに関わる新たな測定を行うことができるようになるとのことです。
Image Credit: KPNO/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA/Legacy Imaging Survey
(参照)NOIRLab