重力レンズで現れた、花びらのような「アインシュタインの十字架」

この画像の中央付近には、「アインシュタインの十字架(アインシュタイン・クロス)」と呼ばれる天体が映っています。アインシュタインの十字架とは、手前側にある銀河の重力レンズ効果によって、奥にある天体の像が四つに分かれ、十字の形に並んでいるようにみえる天体のことです。

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遠方の銀河では急速な星形成が進行中

左の画像はアインシュタインの十字架を拡大表示したものです。中央の赤みを帯びた銀河の周囲に、まるで青い花びらのように奥の銀河の像が四つに分かれて見えています。

銀河など質量をもつ天体の周囲では空間がゆがみます。奥にある天体からの光は、ゆがんだ空間を通るために曲がります。手前の銀河の重力がまるでレンズのようなはたらきをすることから、このような現象は「重力レンズ」と呼ばれます。アインシュタインの十字架にみられる奥の銀河の4つの像は、それぞれ別の経路を通ってきた光が地球に届いたものです。

画像はESO(ヨーロッパ南天天文台)のVLT(超大型望遠鏡)に設置されたMUSEという装置で観測されました。MUSEを用いた観測から、奥の銀河では急速に星形成が進んでいることが示されました。遠方にある銀河はふつう、宇宙の膨張により赤みを帯びてみえます。ただ画像に映る奥の銀河は、若い星が多く存在するため青くみえています。中央のレンズ銀河は比較的近くにありますが、古い星が多いため赤みを帯びてみえています。

画像は、ESOの「今週の1枚(Picture of the Week)」として2023年9月11日に公開されました。

Image Credit: ESO/A. Cikota et al.

(参照)ESO