予想外の進路で移動した海王星の暗い渦

この画像は、太陽系最果ての惑星である海王星をハッブル宇宙望遠鏡がとらえたものです。2020年1月7日に撮影され、12月15日に公開されました。中央上と右上に暗い渦(暗斑)が映っています。中央上の暗斑は幅7400kmほど、右上の暗斑はやや小さく幅6300kmほどです。

1989年、NASA(アメリカ航空宇宙局)の惑星探査機ボイジャー2号が海王星に再接近した際に撮影した画像には、海王星の南半球に「大暗斑」「小暗斑」と呼ばれる暗い渦が映っていました。ただ1994年にハッブル宇宙望遠鏡で海王星を観測した際には、それらの暗斑は消えていました。ところがその後ハッブル宇宙望遠鏡によって、海王星の北半球に別の暗斑が出現していることが観測されました。木星の大赤斑とは異なり、海王星の暗斑は現れたり消えたりするのです。

画像中央上に映っている暗斑は2018年にハッブル宇宙望遠鏡によって発見されたものです。1年後の観測では、その暗斑が南の赤道へ向かって移動し始めていることが分かりました。2020年1月の観測では、冒頭の画像のように別の小さな暗斑も観測されました。小さな暗斑は、巨大な暗斑の一部だった可能性があります。この小さな暗斑は数か月後には消えてしまいました。

海王星の暗斑は高気圧星の渦で、中緯度地方で形成されたのちに赤道方向へ移動していくとみられています。最初はコリオリ力によって安定していますが、赤道に向かうにつれてコリオリ力が弱まって嵐は崩壊します。シミュレーションによると、このような嵐はコリオリ力の効果がなくなるまでほぼ直線的に赤道に向かいます。しかし最新の暗斑は予想に反して、嵐が消失する領域まで移動せず中緯度へと逆戻りしたのです。

暗斑の進路の反転と同時に小さな暗斑が出現しました。おそらく小さな暗斑が分かれていくことで赤道へ向かう動きが止まったのだろうとみられています。

Image Credit: NASA, ESA, STScI, M.H. Wong (University of California, Berkeley) and L.A. Sromovsky and P.M. Fry (University of Wisconsin-Madison)

(参照)Hubblesite