ボイジャー1号との通信が一時中断。通常運用にはまだ戻らず

ボイジャー1号との通信が一時中断したとNASA(アメリカ航空宇宙局)が公表しました。現在は探査機と通信できてはいるものの、通常の運用にはまだ戻っていません。

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障害保護システムが作動

ボイジャー探査機には、探査機で発生した問題に自動的に対応する障害保護システムが搭載されています。例えば探査機が電力を過剰に消費した場合には、飛行を続けるために必須ではないシステムをオフにすることで電力を節約します。

2024年10月16日、ボイジャーの運用チームは探査機のヒーターの一つをオンにするコマンドを送信しました。その際、電力は十分にあるはずにもかかわらず障害保護システムが作動しました。

ボイジャー1号は現在、地球から240億km以上離れたところを航行しています。地上から送ったコマンドが探査機に届くのに約23時間、コマンドの結果が戻ってくるのにも約23時間かかります。そのため運用チームが、探査機の障害保護システムが作動したことを知ったのは、2日後の10月18日になってからでした。その日、ボイジャー1号からの信号を深宇宙ネットワーク(Deep Space Network)のアンテナで検出できなかったのです。

ボイジャー探査機には、Xバンド無線送信機とSバンド無線送信機という2種類の送信機が搭載されています。Xバンドに比べSバンドは消費電力は少ないものの信号は弱く、ボイジャー1号は1981年以来、地球との通信にSバンド送信機を使用していません。現在、通常はXバンド送信機で地球と通信しています。

ボイジャー1号からの信号を検出できなかった運用チームは、障害保護システムがXバンド送信機のデータ送信速度を低下させたことで、信号が変化したのではないかとの仮説を立てて調査。その結果、変化したXバンド信号が、その日のうちに発見されたとのことです。

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通信が完全に停止!?

その後、10月19日にボイジャー1号との通信が完全に停止したようにみえる状況になりました。運用チームは、探査機の障害保護システムがさらに2回作動し、Xバンド送信機の電源を切ってSバンド送信機に切り替えたのではないかと考えました。距離が遠いこともあり、Sバンドの信号をとらえられる確信はなかったとのことですが、深宇宙ネットワークの技術者がその信号を発見することができました。

障害保護システムが作動した原因はまだわかっていません。原因を突き止める前にXバンド送信機の電源を入れるのはリスクを伴います。運用チームは10月22日にボイジャー1号へコマンドを送信し、24日にSバンド送信機が機能していることを確認しました。現在は、ボイジャー1号に何が起きたのかを解明し、通常の運用に戻すための情報を収集しているとのことです。

Image Credit: Caltech/NASA-JPL

(参考記事)
ボイジャー1号、2号の現在地は? 今どこにいるのか

(参照)Voyager - NASA blog