木星の衛星エウロパは生命に適した環境なのか 探査機エウロパ・クリッパー打ち上げ

2024年10月14日、木星の衛星エウロパに向けて、NASA(アメリカ航空宇宙局)の探査機エウロパ・クリッパーが打ち上げられました。エウロパ・クリッパーの主な目的は、エウロパの地下に生命を育める場所があるかどうかを調べることです。エウロパの氷の地殻とその下にある海の性質、および衛星の組成と地質を調査します。

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エウロパは生命存在に適した環境なのか

エウロパの氷の地殻の下には、地球の海の水の2倍に及ぶ量の水をたたえた海が存在していると考えられています。そこには有機化合物やエネルギー源も存在する可能性があります。エウロパには、生命存在に必要と考えられている水、適切な化学物質、エネルギーが存在していると考えられているのです。

エウロパ・クリッパーは、木星を周回しながらエウロパに約50回接近しつつ観測を行い、衛星のほぼ全体を調査します。画像の撮影のほか、さまざまなデータを収集して、エウロパが生命に適した条件を備えているかどうかを調べることになっています。生命そのものを探査することが目的ではなく、エウロパの表面下に生命を維持できる環境があるかどうかを調べることが主な目的です。

太陽から遠い木星系でも必要な電力をまかなえるよう、エウロパ・クリッパーには巨大な太陽電池アレイを備えています。探査機は高さ5mで、太陽電池アレイを展開すると全長30.5m以上になります。NASAが惑星ミッションのために建造した探査機としては史上最大です。

エウロパ・クリッパーには、エウロパの表面と薄い大気の高解像度画像や組成マップを取得するためのカメラと分光計が搭載されています。また地表下の水を探索するレーダー、海や深部を探るための磁力計と重力測定装置、比較的温度の高い氷や水が最近吹き出した位置をピンポイントで特定するための熱放射計測器のほか、エウロパの薄い大気と周辺の宇宙環境の微粒子の構成を測定する装置も搭載されています。

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打ち上げからミッション終了までの予定

エウロパ・クリッパーは2024年10月14日、スペースX社のファルコン・ヘビーロケットで打ち上げられました。

2025年2月には火星でフライバイ(スイングバイ)を実施。火星の重力を利用して加速します。打ち上げ日しだいですが、エウロパ・クリッパーは火星表面から500〜1000kmまで接近します。

2026年12月には地球でフライバイを行います。地球から約3200kmまで接近します。火星と地球でのフライバイによって、木星ヘ到達するのに十分なエネルギーを得ます。

エウロパ・クリッパーが木星の周回軌道に投入されるのは2030年4月です。

ガニメデなどガリレオ衛星で複数回フライバイを行い、エウロパを観測するのに適した軌道へと入っていきます。2031年春にエウロパでの最初のフライバイが予定されており、5月から本格的な観測がスタートします。

エウロパは常に同じ面を木星に向けています。エウロパ・クリッパーはまずエウロパの木星に向いていない面の観測を行い、その後、木星に向いている面の観測を行います。現在の計画では、2034年9月にガニメデの表面に衝突させてミッションを終了することになっています。

Image Credit: NASA/JPL-Caltech

(参照)Europa Clipper - NASA Science