月探査機SLIM、運用終了。ピンポイント着陸、3度の越夜に成功

JAXA(宇宙航空研究開発機構)は2024年8月26日、小型月着陸実証機「SLIM」の運用を終了したと発表しました。SLIMは月面での夜を3度越えて生き延びてきましたが、4月下旬の通信を最後に通信できない状態が続いていました。

SLIMが放出した超小型ロボットが月面で撮影した画像。SLIMが映っています。Image Credit: JAXA/タカラトミー/ソニーグループ(株)/同志社大学
SLIMが放出した超小型ロボットが月面で撮影した画像。SLIMが映っています。Image Credit: JAXA/タカラトミー/ソニーグループ(株)/同志社大学

SLIM(Smart Lander for Investigating Moon)は2023年9月7日、X線分光撮像衛星「XRISM」とともにH-IIAロケット47号機で種子島宇宙センターから打ち上げられました。

SLIMは2024年1月20日に月面のシオリ・クレーター付近への着陸に成功。高度50m付近で2基のメインエンジンのうちの1基に異常が発生したにもかかわらず、目標地点から100m以内の場所に着陸することに成功しました。

ただ着陸後、太陽電池の充電ができない状況が確認されました。トラブルの影響で設地後に姿勢がくずれ、太陽電池パネルが想定と異なる方向に向いてしまったとみられます。そのため着陸直後はバッテリーで運用され、降下中や月面で取得したデータが地球へ送信されました。その後、電源がオフにされ、SLIMは休眠状態に入りました。

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着陸直後に休眠も復活。その後、3度の夜を越えた

1度目の越夜後に航法カメラで撮影された月面。Image Credit: JAXA
1度目の越夜後に航法カメラで撮影された月面。Image Credit: JAXA

月の自転周期は約27.32日で、昼と夜が約14日ずつ続きます。SLIMの着陸時、太陽光は東から当たっており、太陽光が西から当たるようになれば太陽電池が充電され、SLIMが復活する可能性があるとみられていました。そして1月29日に実際に電力が回復し、SLIMが復活したのです。

復活後にはマルチバンド分光カメラ(MBC)による観測などを実施。ただ1月31日には現地は日没を迎えたため、SLIMは再び休眠状態に入りました。月面では夜の間、マイナス170℃ほどまで温度が下がります。SLIMはそのような極寒に耐えるよう設計されておらず、復活の可能性は高くないとみられていました。

しかし2月25日に再び通信が可能となりました。その後、3月25日と4月23日にも、越夜後に通信を再開することができました。合計3度の夜を越えることができたのです。しかし5月下旬と6月下旬の越夜後の通信は確立されませんでした。

SLIMのX公式アカウントによれば、8月22日、23日にも通信を試みたもののSLIMからの応答はなく、復旧の見込みがないと判断し、23日22時40分ごろにSLIMの活動を停止させるコマンドを送ったとのことです。

(参照)JAXASLIMのX公式アカウント