天の川銀河の球状星団NGC 1851の中で、これまで知られている最も重い中性子星より重く、最も軽いブラックホールより軽い天体が発見されました。マックスプランク電波天文学研究所のEwan Barr氏、Arunima Dutta氏らが率いた国際チームによる研究です。
中性子星は大質量星が超新星爆発した後に残される高密度の天体です。別の星からのガスが降り積もったり、別の中性子星と衝突するなどして質量が大きくなりすぎると、崩壊してブラックホールになると考えられています。
中性子星が崩壊するには、太陽の2.2倍の質量が必要だと考えられています。一方で観測に裏付けられた理論によれば、これらの星によって形成される最も軽いブラックホールの質量は太陽の約5倍です。中性子星の崩壊に必要な、太陽の2.2倍の質量よりかなり大きく、それらの間にはかなりの差(ギャップ)があります。このギャップの間の質量をもつ天体の性質はわかっていません。
パルサーの周期の変化を測定
研究チームは、南アフリカにある電波望遠鏡MeerKATを使い、はと座の球状星団NGC 1851にあるミリ秒パルサーPSR J0514-4002Eを観測しました。このパルサーは1秒間に170回以上回転しており、回転にともなって非常に規則的な電波放射のパルスが地球に届きます。このパルスの周期の変化をとらえることで、パルサーのまわりにある天体を見つけることができます(このような手法は「パルサータイミング法」と呼ばれます)。観測から伴星の存在が明らかになり、そしてその質量がギャップの間にあることがわかったとのことです。
研究チームは、今回発見された天体が、知られている中で最も重い中性子星なのか、あるいは知られている中で最も軽いブラックホールなのか、はたまた全く新しいタイプの天体なのか、はっきりとしたことは言えないとしています。Dutta氏によれば「この天体の性質を明らかにすることは、中性子星やブラックホール、質量ギャップに潜んでいる可能性のある何らかのものを理解する上でターニングポイントになる」とのことです。