「ハートブレイク星」の明るさの大変動は、星の表面で生じた超巨大な波がもたらした!?

心電図にあらわれる鼓動の波形のように周期的に明るさが変化する連星は「ハートビート星」と呼ばれます。ハートビート星の1つ、「MACHO 80.7443.1718」では、一般的なハートビート星に比べ約200倍も明るさの変動が大きいことが知られています。そのような明るさの変動が、星に生じた巨大な波によるものだとする研究が発表されました。

ハートビート星系の星は、細長い楕円軌道を回っています。月が地球の海で潮汐を作り出すのと同じように、ハートビート星系では星々が接近するたびに潮汐が発生します。潮汐により星の形が細長くなったりゆがんだりして、地球から見て広い面と狭い面が交互にあらわれることで明るさが変動します。多くのハートビート星での明るさの変化はわずか0.1%ほどですが、MACHO 80.7443.1718では約20%も明るさが変動します。

MACHO 80.7443.1718では、太陽の約35倍の質量の巨大な恒星が小さな伴星と連星系を構成しています。論文の主著者であるハーバード・スミソニアン天体物理学センター(CfA)のMorgan MacLeod氏は、コンピュータモデルを作成してこの連星系を分析しました。

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巨大な波が表面に衝突して莫大なエネルギーが発生する

研究によると、小さな伴星の潮汐力によって巨大星の表面で巨大な波が巻き上げられます。波の高さは巨大星の半径の5分の1ほど、およそ約430万kmに達します。これは太陽3つ分に相当する高さです。この巨大な波は、海の波と同じように砕け、星の表面に衝突します。

「ハートブレイク星」との愛称が付けられたこのような星では、「巨大な波が砕けて巨大星の表面に衝突するたびに、地球を数百回も崩壊させることができるほどのエネルギーが放出される」とMacLeod氏は言います。砕けた波が解き放つ莫大なエネルギーにより、星の表面がどんどん速く回転するようになり、そして恒星のガスを外側に押しやって、回転しつつ輝く星の大気を形成するとのことです。

およそ1か月に1度、2つの星がすれ違い、新たな巨大波がハートブレイク星の表面を横切っていきます。それが積み重なることで、巨大星は極方向より赤道方向が約50%も膨らんでいるとのことです。そして新たな波が通過するたびに、より多くの物質が外へと飛び散ります。回転するピザ生地からチーズやソースが飛び散るようなものだとMacLeod氏。MacLeod氏らは、砕ける波によって飛び散って輝く大気を探すことで、ほかのハートブレイク星をさらに探索する計画をしているとのことです。

Image Credit: Melissa Weiss, CfA

(参照)Center for Astrophysics | Harvard & Smithsonian