ハッブル望遠鏡、単独の白色矮星の質量を初めて直接測定!

連星系をなしていない単独の白色矮星の質量が、ハッブル宇宙望遠鏡を使って初めて直接測定されました。はえ座の方向、15光年の距離にある白色矮星LAWD 37の質量が、重力マイクロレンズを利用することで太陽質量の56%であることが判明したとのことです。その値は白色矮星の質量に関する理論的な予測と一致していました。

この画像は、LAWD 37をハッブル望遠鏡がとらえたものです。中央の青く明るい星がLAWD 37です。

これまで白色矮星の質量は、連星系の2つの星の動きを観測することで測定されてきました。一方、LAWD 37の質量の測定では、白色矮星の質量によって星の周囲の空間がわずかにゆがむ「重力マイクロレンズ」を利用しました。これは、遠方の星の手前をLAWD 37が通過したときに遠方の星からの光が少しだけ曲がり、星の位置が一時的にずれて見える現象です。

イギリスのケンブリッジ大学にいたPeter McGill氏(現在はカリフォルニア大学サンタクルーズ校)はハッブル望遠鏡を使い、LAWD 37の周りで遠方の星の光がどのように曲がり、星の見かけの位置がどのように変化するのかを精密に測定してLAWD 37の質量を求めることに成功しました。

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位置天文衛星ガイアのおかげで観測が可能に

今回の研究には、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の位置天文衛星ガイアも重要な役割を果たしました。ガイアのデータにもとづき、2019年11月に遠方の恒星の手前をLAWD 37が通過することが予測できたのです。

ただ遠方の星からの光は非常に微弱でした。その星と比べて、LAWD 37は400倍もの明るさがありました。可視光でこのような高コントラストでの観測が可能なのはハッブル宇宙望遠鏡だけでした。

McGill氏らは現在、ガイアのデータをもとに、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による別の白色矮星LAWD 66の観測を進めています。ウェッブ望遠鏡は赤外線で観測を行うため、手前の白色矮星は暗く、奥の恒星は明るく見え、コントラストを抑えられる利点があります。McGill氏らは2022年にウェッブ望遠鏡で最初の観測を行いました。2024年に見かけの位置の変化が最も大きくなると見られており、今後も観測を行うことになっています。

こちらのアニメーションは、白色矮星の重力による周辺の空間のゆがみによって、遠方の星の見かけの位置がずれることを模式的に示したものです。

Image Credit: NASA, ESA, P. McGill (Univ. of California, Santa Cruz and University of Cambridge), K. Sahu (STScI), J. Depasquale (STScI)

(参照)HubblesiteESA/Hubble