2003年から2020年にかけて、海王星の大気の温度が予想外の変動をしていたことが明らかになりました。初夏から盛夏に向かう時期にもかかわらず気温が低下した後、南極域で気温が急上昇していたのです。
これらの画像は、2006〜2020年に撮影された海王星の中間赤外線画像です。2006、2009、2018年の画像はESO(ヨーロッパ南天天文台)のVLT(超大型望遠鏡)、2020年の画像は「すばる望遠鏡」によって得られたものです。
海王星は太陽から約30au(天文単位。1auは太陽〜地球間の平均距離に相当する約1億5000万km)のところを公転する、太陽系最果ての惑星です。自転軸は約28度傾いており季節変化があります。ただ太陽から遠く太陽を1周するのに約165年かかるため、海王星での春夏秋冬のそれぞれの季節は40年以上にもなります。
海王星の南半球では、2005年に夏のシーズンに入っていました。気温が徐々に上がっていくだろうと予想されるなか、2003年から2018年の間に、海王星の成層圏の平均気温が8℃も下がっていました。ところがその後、2018年から2020年の間には、南極域の成層圏の気温が11℃も急上昇していました。
このような予想外の気温変化の原因は今のところ分かっていません。海王星の成層圏の化学的性質の季節変化、気象パターンのランダムな変動、太陽の活動サイクルの影響などが指摘されていますが、原因を明らかにするには今後のさらなる観測が必要になります。またジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の中間赤外線観測装置MIRIによる観測が2022年末に予定されており、海王星の大気の化学的性質や温度について新たなデータが得られることが期待されています。
こちらは2020年に可視光(中央)と中間赤外線(右)でみた海王星を比較したものです。可視光画像はハッブル宇宙望遠鏡、中間赤外線画像はすばる望遠鏡が撮影しました。主に海王星の南半球が見えており、下側には南極も見えています。
今回の研究は、イギリスのレスター大学、アメリカのNASA(アメリカ航空宇宙局)JPL(ジェット推進研究所)、日本の東北大学や国立天文台などによる国際研究チームによるものです。日本のすばる望遠鏡やESOのVLTなど地上の大望遠鏡やスピッツァー宇宙望遠鏡の観測から得られた中間赤外線画像の解析から得られた成果です。