この画像は、2022年7月12日に公開されたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の初のフルカラー画像の一部で、ペガスス座にある「ステファンの五つ子」と呼ばれる銀河のグループが映っています。画像は、ウェッブ望遠鏡の近赤外線カメラ(NIRCam)と中間赤外線装置(MIRI)でとらえた画像を組み合わせたものです。NIRCamは6つのフィルタ、MIRIは2つのフィルタが使われています。
画像には、何百万もの若い星からなる星団や、スターバースト(爆発的な星形成)領域などが映し出されています。また重力相互作用によって、いくつかの銀河からガスや塵、星からなる「尾」が伸びています。
「HCG 92」とも呼ばれるステファンの五つ子は、「五つ子」と呼ばれてはいますが、実際にグループを形成しているのは4つの銀河(NGC 7317、NGC 7318A、NGC 7318B、NGC 7319)です。それら4つの銀河は地球から約2億9000万光年の距離にあります。画像で左側に映っている銀河(NGC 7320)だけ地球に近く、その距離は約4000万光年です。
いちばん上に映っている銀河NGC 7319には活動銀河核があり、そこには太陽の2400万倍の質量をもつ超巨大ブラックホールが存在しています。そのブラックホールは活発に物質を取り込み、太陽の400億倍に相当する光エネルギーを放出しています。
画像は月の直径の5分の1ほどの範囲をカバーしており、オリジナルは12,654×12,132ピクセル、1億5000万画素以上にもなる巨大な画像です。ステファンの五つ子の周囲には、遠方にある銀河も多数映し出されています。
こちらはNIRCamのみの画像です。
MIRIが中間赤外線で見た銀河たちの姿
こちらの画像はMIRIを使い中間赤外線でとらえたステファンの五つ子です。冒頭の画像はMIRIの3つのフィルタのうち2つが使われていましたが、この画像ではもう1つのフィルタも使われています。
この画像では、赤は塵の多い星形成領域や、極端に遠くにある初期銀河、また厚い塵に覆われた銀河などを示しています。青い点光源は星や星団、青く広がって見えている部分は炭化水素分子を多く含む塵を示しています。画像の背景に小さく映し出されている銀河については、緑と黄は炭化水素を豊富に含む遠方の初期銀河を示しています。
またいちばん上に映っている銀河NGC 7319では、超巨大ブラックホールを取り囲む塵を透過し、非常に明るい活動銀河核の姿が見えています。
こちらはアストロピクスでも以前紹介した、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したステファンの五つ子の画像です。この画像のオリジナルの解像度は6064×6760でした。(参考記事:ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた「ステファンの五つ子」と呼ばれる銀河グループ)
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の初のフルカラー画像として公開された別の画像については、以下の記事をご覧ください。
Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI