サイズなどが金星に似た系外惑星「トラピスト1c」に大気がないらしいことが判明 ウェッブ望遠鏡が観測 | アストロピクス

サイズなどが金星に似た系外惑星「トラピスト1c」に大気がないらしいことが判明 ウェッブ望遠鏡が観測

地球から約40光年の距離にある赤色矮星トラピスト1(TRAPPIST-1)には、まわりを公転する7つの岩石惑星があることが知られています。これらの惑星は、太陽系の岩石惑星とサイズや質量が似ています。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によって、7惑星のうちの1つであるトラピスト1c(TRAPPIST-1 c)の温度が測定され、日中の温度が約107℃であることがわかりました。

赤色矮星は、誕生から10億年の間、強烈なX線と紫外線を放射して惑星の大気を奪い去ってしまいます。また惑星の形成時、大気を作るのに十分な水や二酸化炭素、その他の揮発性物質が存在したかどうかわかっていません。

トラピスト1cは金星とほぼ同じサイズで、金星が太陽から受けるのと同じくらいの放射を主星から受けています。金星と同じように分厚い二酸化炭素の大気に覆われている可能性もあると見られていました。

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水が少ない条件下で形成されたか

研究チームはウェッブ望遠鏡のMIRI(中間赤外線装置)を使い、トラピスト1cが恒星の背後に隠れたときの赤外線の明るさの変化を観測しました。

惑星が恒星の背後に隠れた時の明るさは、恒星のみの明るさになります。一方、惑星が隠れておらず恒星と並んでいるときの明るさは、恒星と惑星をあわせたものになります。研究チームは両者を比較することで、惑星の昼側から放射される15μmの赤外線の量を測定しました。

この手法は、別の研究チームがトラピスト1系で最も内側にあるトラピスト1bに大気が存在しない可能性が高いことを示した研究で用いたのと同じ手法です。

惑星が放射する中間赤外線の量は温度に関係しており、そして温度は大気の影響を受けます。15μmの赤外線は二酸化炭素ガスによく吸収されるため、二酸化炭素の大気に覆われている場合にその波長で見ると惑星は暗く見えます。ただし、雲は光を反射して惑星を明るく見せ、二酸化炭素の存在を隠します。

さらに、どんな組成の大気も、昼側から夜側へと熱を再分配するため、大気がない場合に比べて昼側の温度が低くなります。なおトラピスト1cは、地球の月と同じように常に同じ面を主星に向けています。

研究チームは、トラピスト1cが大気のない惑星か、あるいは雲のない非常に薄い二酸化炭素の大気を持つ惑星であるとみています。厚い大気がないことは、トラピスト1cが比較的、水が少ない条件下で形成された可能性があることを示唆しています。トラピスト1にある、より低温で温暖な他の惑星が同様の条件下で形成されたとしたら、それらもまた惑星をハビタブルにするために必要な水などの成分がほとんどない状態でスタートしたのかもしれません。

(参照)Webb Space Telescope