ウェッブ宇宙望遠鏡がとらえた棒渦巻銀河NGC 5068の中心付近 | アストロピクス

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ウェッブ宇宙望遠鏡がとらえた棒渦巻銀河NGC 5068の中心付近

この画像はジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影したもので、棒渦巻銀河NGC 5068の中心付近が映っています。NGC 5068は、おとめ座の方向、約1700万光年の距離にあります。

棒渦巻銀河は、銀河の中央部に棒状の構造がある渦巻銀河です。画像には左上に「棒」が見えており、また渦状腕の一部も映っています。何千もの星々のほか、ガスや塵も映し出されています。

画像はウェッブ望遠鏡のNIRCam(近赤外線カメラ)とMIRI(中間赤外線装置)でとらえた画像を組み合わせたものです。

こちらの画像はNIRCamでとらえた画像です。膨大な数の星が映し出されています。なかでも画像左上の「棒」の部分には星が高密度に集まっています。内部の星に照らされた赤く輝くガス雲も映っています。

こちらはMIRIでとらえた画像です。銀河内の塵や、新たに形成された星団を含む輝くガスの泡が映っています。

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天文学者が近傍銀河の星形成を調査する2つの理由

これらの画像は、近傍銀河での星形成の初期段階を調査する、「PHANGS(Physics at High Angular resolution in Nearby GalaxieS:近傍銀河の高解像度観測による物理学研究)」というプロジェクトの一環で撮影されました。ウェッブ望遠鏡のウェブページによると、このような観測は、2つの理由から天文学者にとって価値があるとのことです。

1つは、星間に存在する希薄なプラズマの物理学から銀河全体の進化に至るまで、星形成が天文学の非常に多くの分野を支えているからです。近傍銀河での星形成を観測することによって、天文学者は入手可能なウェッブ望遠鏡のデータの一部を利用して、主要な科学を推し進めたいと考えています。

もう1つは、ウェッブ望遠鏡の観測が、地上の望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡などを利用した他の研究に基づいているからです。ウェッブ望遠鏡が行った近傍にある19の星形成銀河の観測は、ハッブル望遠鏡による1万個の星団のカタログや、VLT(超大型望遠鏡)による2万個の星形成領域の分光マッピング、アルマ望遠鏡によって特定された高密度の分子雲などと組み合わされました。これらの観測はさまざまな波長で行われており、星形成の細部をつなぎ合わせて全体を知るための前例のない機会を天文学者に与えています。

ウェッブ望遠鏡のウェブページでは毎月、「Picture of the Month(今月の1枚)」の画像を公開しています。今回紹介した画像は2023年5月のPicture of the Monthとして掲載されたものです。

Image Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, J. Lee and the PHANGS-JWST Team

(参照)ESA/Webb