成層圏にあるオゾン層は、太陽の有害な紫外線から地上の生命を守る役割をしています。秋になると毎年のように、南極上空でオゾン層が減少してオゾンホールができることが話題になります。
一方で北極上空ではふだん、オゾンホールが出現することはあまりありません。ところが2020年は春先に、北極上空でオゾンが異常に減少しオゾンホールが発生しました。
これまでにも北極上空で小さなオゾンホールが発生したことはありました。ただ2020年のものは例年よりはるかに大きなものになっています。ただその面積は最大100万平方km以下で、南極のオゾンホールと比べるととても小さいものです。南極のオゾンホールは通常、3〜4か月で2000万〜2500万平方kmに達します。
ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の地球観測衛星センチネル5Pのデータを用いて作成されたアニメーション。2020年3月9日から4月1日までのオゾンレベルを示しています。
クロロフルオロカーボン(フロン)などの物質とともに、オゾンホールができるには極端に低い気温(マイナス80℃以下)や太陽光も必要です。北極の気温は通常、南極のように急激に低くなることはありません。しかし2020年は、北極付近を流れる強力な風が、成層圏に形成される極渦の中に寒気を閉じ込めました。
北極では冬の時期、太陽が昇らない極夜が訪れます。極夜が明けて届くようになった太陽光が、北極上空のオゾンを破壊する反応を進めることになりました。
2020年4月中旬には、この北極のオゾンホールはなくなると予想されています。
Credit: includes modified Copernicus data (2020), processed by DLR/BIRA/ESA