NSF(全米科学財団)のダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡(Daniel K. Inouye Solar Telescope : DKIST)が、太陽の光球の黒点や彩層などをとらえた8点の新しい画像が公開されました。イノウエ太陽望遠鏡は、ハワイのマウイ島、ハレアカラ山頂付近に設置された口径4mの主鏡を持つ世界最大の太陽望遠鏡です。
2020年にファーストライトを迎えたイノウエ太陽望遠鏡は、2022年2月以来、科学運用の試運転フェーズに入っています。新たに公開された画像は、2022年に実施されたサイクル1運用期間中に取得されたデータの一部です。
黒点(暗部、半暗部)と粒状斑
この画像には、太陽の光球にみられる黒点の詳細構造が映し出されています。太陽の黒点は、特に暗い「暗部」と、それを取り囲むやや明るい「半暗部」からなります。画像には、黒点の暗部に「Umbral Dot」と呼ばれる小さな輝点も映っています。暗部の周辺は、フィラメントからなる半暗部が取り囲んでいます。Image Credit: NSF/AURA/NSO Image Processing: Friedrich Wöger(NSO), Catherine Fischer (NSO) Science Credit: Rolf Schlichenmaier at Leibniz-Institut für Sonnenphysik (KIS)
こちらの画像には、黒点の暗部を横切る「ライトブリッジ(light bridge)」が映っています。ライトブリッジは、暗部の両サイドの半暗部どうしにまたがる明るく細長い構造です。黒点が崩壊し始める兆候であると考えられています。Image Credit: NSF/AURA/NSO Image Processing: Friedrich Wöger(NSO), Catherine Fischer (NSO) Science Credit: Tetsu Anan (NSO)
この画像には、太陽の表面(光球)にある黒点の暗部と反暗部が映し出されており、その外側には粒状斑がくっきりと映っています。黒点の暗部には「ライトブリッジ(light bridge)」も見られます。Image Credit: NSF/AURA/NSO Image Processing: Friedrich Wöger(NSO), Catherine Fischer (NSO) Science Credit: Philip Lindner at Leibniz-Institut für Sonnenphysik (KIS)
黒点は暗部と半暗部からなりますが、この画像には、半暗部を欠いた暗部の破片が映っています。これらの破片は、以前は近くにある黒点の一部だったことから、黒点の進化の「最終段階」である可能性があることを示唆しています。半暗部の形成または崩壊の過程がとらえられることは非常にまれです。Image Credit: NSF/AURA/NSO Image Processing: Friedrich Wöger(NSO), Catherine Fischer (NSO) Science Credit: Jaime de la Cruz Rodriguez (Stockholm University)
この画像には、太陽の静穏領域の光球表面が映っています。画像に見られる粒状の構造は「粒状斑」と呼ばれます。太陽表面ではガスが対流しており、粒状斑はガスが内部から上昇してきている部分です。粒状斑どうしの間のやや暗い部分では、表面で冷えたガスが下降しています。粒状斑の境界の暗い部分に、磁場の兆候を示す小さな明るい領域も映し出されています。Image Credit: NSF/AURA/NSO Image Processing: Friedrich Wöger(NSO), Catherine Fischer (NSO)
彩層にみられる糸状の細長い構造
太陽の表面(光球)の上には「彩層」と呼ばれる下層大気が存在しています。この画像は、彩層にある「fibril(小繊維)」と呼ばれる糸状の細長い構造を映したものです。明るい構造の輪郭は、光球における磁場の存在を示しています。この画像は、NASA(アメリカ航空宇宙局)のパーカー・ソーラー・プローブおよびESA(ヨーロッパ宇宙機関)のソーラー・オービターとの共同観測キャンペーンのときに撮影されました。Image Credit: NSF/AURA/NSO Image Processing: Friedrich Wöger(NSO), Catherine Fischer (NSO) Science Credit: Public DDT Data
この画像も彩層をとらえたものです。「fibril(小繊維)」が映っているほか、ポア(小黒点)あるいは黒点の暗部の破片と見られるものが暗く見えています。Image Credit: NSF/AURA/NSO Image Processing: Friedrich Wöger(NSO), Catherine Fischer (NSO) Science Credit: Juan Martínez-Sykora (Bay Area Environmental Research Institute)
この画像にも、彩層にある「fibril(小繊維)」が映っています。ESAのソーラー・オービターと連携しつつ撮影された画像です。Image Credit: NSF/AURA/NSO Image Processing: Friedrich Wöger(NSO), Catherine Fischer (NSO) Science Credit: Public DDT Data