この映像と画像は、天の川銀河と大マゼラン銀河にある、恒星質量ブラックホールが確認された22のX線連星系を可視化したものです。映像にあるブラックホール連星はすべて同じ縮尺で再現されており、天体の動き(軌道運動)は約2万2000倍に速く表現されています。また軌道面の角度は、地球から見た時の角度になっています。
恒星と対になっているブラックホールの周囲には、恒星から流れ込んだガスが「降着円盤」と呼ばれる扁平な円盤を形成します。映像の中央に表示されている「GRS 1915(GRS 1915+105)」のブラックホールの降着円盤の大きさは8000万km以上もあります。これは太陽〜水星間の距離を超えるほどの大きさです。
降着円盤のガスは渦を巻くようにブラックホールへ落ち込んでいきながら加熱され、X線で輝くようになります。重力波によってブラックホールの合体が検出できるようになるまでは、そのX線を観測することがブラックホール連星を探すための主な手段でした。
映像では、ブラックホールは質量に応じた大きさで示されていますが、いずれも実際の縮尺よりかなり大きく描かれています。たとえば太陽の約21倍の質量をもつ「はくちょう座X-1(Cygnus X-1)」のブラックホールの表面(事象の地平面)は約124kmしかありません。
映像の途中では、以下のいくつかの連星系が拡大表示され、比較のために太陽の大きさも表示されています。
MAXI J1659は、知られている中で最も速い2.4時間で公転しているブラックホール連星系です。地球からの距離は2万9000光年、ブラックホールの質量は太陽の5倍、伴星の質量は太陽の0.2倍です。
A0620-00は、知られている中で最も近くにあり、地球からの距離は3300光年。ブラックホールの質量は太陽の6.6倍、伴星の質量は太陽の0.5倍で、7.8時間で公転しています。
はくちょう座X-1は、最初に確認されたブラックホールとして知られています。7200光年の距離にあり、5.6日で公転しています。ブラックホールの質量は太陽の21倍、伴星の質量は太陽の40倍です。
GRS 1915+105のブラックホールは、最も大きな降着円盤をもっています。地球からの距離は8200光年、33.5日で公転しています。ブラックホールの質量は太陽の15倍、伴星の質量は太陽の1.2倍です。
Credits: NASA’s Goddard Space Flight Center and Scientific Visualization Studio
(参照)NASA