星の表面で水素を燃やし老化を遅らせる白色矮星を発見

核融合を停止した星の最後の姿である白色矮星。白色矮星になってしまった後は、時間の経過とともに冷えていくだけだと考えられていましたが、一部の白色矮星では星の表面で核融合反応を続けていることが、ハッブル宇宙望遠鏡の観測によって明らかになりました。

太陽程度の質量の星は晩年になると赤色巨星に進化し、その後、外層のガスが放出されて中心に白色矮星が残ります。白色矮星は宇宙で一般的な天体で、太陽を含め宇宙のすべての恒星の約98%が、最終的に白色矮星になります。現在の太陽は中心部で水素を燃料とした核融合反応が起きていますが、白色矮星では核融合は起きておらず、時間とともにゆっくりと冷えていくと考えられていました。

今回、国際的な研究チームによって、白色矮星の表面で核融合反応が発生し、白色矮星の老化を遅らせることができるとする研究が発表されました。

白色矮星の調査のため、研究チームはM3とM13という2つの球状星団にある白色矮星を比較しました。この2つの球状星団は、年齢や金属量など多くの物理的性質が似ています。ただ最終的に白色矮星になる星の集団は異なっています。とくに、「水平分枝」と呼ばれる星の進化段階での星の全体的な色はM13の方が青く、より高温の星の集団であることを示しています。

研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡のWFC3(広視野カメラ3)を使い、M3とM13を近紫外線の波長で観測し、両星団にある700以上の白色矮星を比較しました。その結果、M3では恒星の核が冷えていくだけの標準的な白色矮星が含まれているのに対し、M13では標準的な白色矮星と、水素の外層を保持してよりゆっくりと冷えている白色矮星とがあることが分かりました。

研究チームはM13での星の進化のシミュレーション結果と比較し、M13にある白色矮星の約70%が表面で核融合を発生して冷えていくのを遅らせていることを明らかにしました。水素の外層は、星の老化の過程で宇宙空間へ逃げられずに重力でとらえられたものと見られています。

天文学者は白色矮星がどれくらい冷えているかを自然の時計として利用し、球状星団や散開星団の年齢を決定してきました。しかし水素の核融合が起きている白色矮星の場合、年齢の推定に10億年の誤差が生じる可能性があるとのことです。

Image Credit: ESA/Hubble & NASA, G. Piotto et al.

(参照)HubblesiteESA/Hubble