ESAの小惑星探査機Hera、DARTの衝突現場を調査へ

ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の探査機Hera(ヘラ)が、2024年10月7日に打ち上げられました。ヘラの目的地は小惑星ディモルフォス。2022年9月に、NASA(アメリカ航空宇宙局)のDART(ダート)探査機が衝突し、その軌道を変更した小惑星です。

二重小惑星探査機Hear。Image Credit: ESA-Science Office
二重小惑星探査機Hear。Image Credit: ESA-Science Office

ある程度以上のサイズの小惑星が地球に衝突すると、深刻な被害をもたらす可能性があります。DARTは、衝突することで小惑星の軌道を変化させる技術を実証するための探査機でした。2022年9月26日にDARTは、小惑星ディディモスのまわりをまわるディモルフォスに衝突し、公転周期を約33分短縮することに成功しました。(参考)探査機DART、小惑星への衝突成功!

今回打ち上げられたHeraは、DARTが訪れた二重小惑星を再訪し、ディモルフォスに関する追加データを収集することが主な目的です。二重小惑星に関する科学的な調査も行います。二重小惑星にランデブーしつつ観測を行うのは、Heraが史上初めてのことになります。

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多く残る不明点を探る

NASAの探査機DARTがとらえたディディモス(右下)とディモルフォス(中央)。Image Credit: NASA/Johns Hopkins APL
NASAの探査機DARTがとらえたディディモス(右下)とディモルフォス(中央)。Image Credit: NASA/Johns Hopkins APL

ディディモスは直径約780m、2.26時間の周期で自転する小惑星です。一方ディモルフォスは直径約151mで、ディディモスの表面から約1.1kmのところを約11時間22分で周回しています(DART衝突で約33分短縮)。なおこれらの二重小惑星が地球に衝突する危険性はありません。

DARTの衝突によって軌道を変更することには成功しましたが、ディモルフォスの質量や内部構造、衝突によってクレーターが形成されたのかなど、まだ不明な点は多く残っています。またディモルフォスの軌道についても、地球からの測定では10%の誤差が残っています。

DARTがとらえたディモルフォス。Image Credit: NASA/Johns Hopkins APL
DARTがとらえたディモルフォス。Image Credit: NASA/Johns Hopkins APL

Heraには、カメラや分光計、レーザー距離計など観測機器のほか、2つのキューブサットが搭載されています。それらにより衝突現場を直接調べることで、残された謎について迫ろうとしています。なお日本も熱赤外カメラをHeraに提供しています。

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二重小惑星到着後の予定

ディモルフォスに接近するHeraの想像図。Image Credit: ESA-Science Office
ディモルフォスに接近するHeraの想像図。Image Credit: ESA-Science Office

Heraは2025年3月に火星でスイングバイ(フライバイ)を行い、2026年10月にディディモスとディモルフォスに到着する予定です。

到着後、最初の6週間は、小惑星まで20〜30km離れたところから、全体的な形状や質量、熱特性などのデータを収集します。その後の4週間は、2つのキューブサットを放出し、初期運用をサポートします。その後の段階(4週間)では、小惑星までの距離を8〜10kmに短縮して観測を続けます。その後の6週間、さらに距離を縮めながら観測を継続していきます。最終的にはディモルフォスから1kmの低高度まで接近し、DARTの衝突痕を含めて10m単位の解像度での観測を実現することになっています。ミッションはディディモスに着陸することで終了する可能性があります。

(参考)「DART」関連記事一覧(アストロピクス)

(参照)ESA