日本とヨーロッパ共同の水星探査機ベピコロンボ(BepiColombo)が、2021年8月10日に金星でフライバイを行います。金星への最接近は8月10日22時48分(日本時間)で、高度550kmまで金星に接近します。ベピコロンボが2020年10月15日に1回目の金星フライバイを行った際は、最接近時の距離は1万km以上ありましたから、今回は非常に金星に近づくことになります。
ベピコロンボは、日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)の水星磁気圏探査機「みお」(MMO:Mercury Magnetospheric Orbiter)と、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の水星表面探査機(MPO:Mercury Planetary Orbiter)という2機のオービターで水星の観測を行うミッションです。「みお」とMPO、そして電気推進モジュールMTM(Mercury Transfer Module)が結合した状態で水星に向かっています。
フライバイは、天体の重力を利用して探査機の軌道や速度を変えるために行われます。「みお」とMPOは最終的に、水星を周回する軌道に入って観測を行います。そのためにはゆっくりと水星に接近し、水星の重力にとらえられる必要があります。そこでベピコロンボは、地球や金星、水星で合計9回のフライバイを行って速度を減速させながら水星へ向かいます。
今回の金星フライバイの際、2つの探査機の主カメラはMTMに遮られているため金星を撮影することはできません。ただ1回目の金星フライバイの時と同じように、MTMに設置されているモニタリング・カメラで、最接近の頃とその後の数日間、撮影が行われることになっています。
一方で、ESAとNASA(アメリカ航空宇宙局)の太陽探査機ソーラー・オービターは、ベピコロンボより33時間前の8月9日13時42分に、7795kmまで最接近して金星フライバイを行います。ソーラー・オービターは太陽に向けたままにしておく必要があるため、最接近のころに金星を撮影することはできません。
ただ最接近前の1週間、ソーラー・オービターの太陽圏撮像装置(SoloHI)によって、金星の夜側を撮影する機会があるかもしれないとのことです。太陽圏撮像装置は通常、太陽風内の電子で散乱される光をとらえることで太陽風の画像を撮影します。
今回のフライバイ時、ソーラー・オービターとベピコロンボは、それぞれ異なる場所から、金星の磁気・プラズマ環境のデータ収集を行います。金星では現在、日本の金星探査機「あかつき」も周回しながら観測を行っています。
ベピコロンボは2021年10月初めに、水星で6回予定されているフライバイのうち1回目のフライバイを行います。「みお」とMPOは2025年後半に水星の周回軌道に投入される予定です。一方、ソーラー・オービターは11月下旬に地球でのフライバイを行う予定になっています。その後は金星でのフライバイを定期的に行いながら、軌道の傾きを少しずつ大きくしていき、太陽の高緯度地域を観測することになっています。
Image Credit: ESA/ATG medialab
(参照)ESA