アルマ望遠鏡の観測データから、宇宙誕生後約10億年後の宇宙にある銀河の周囲に、半径約3万光年におよぶ巨大な炭素ガス雲が存在することが明らかになりました。
宇宙の誕生直後は、水素やヘリウムなどの軽い元素しか存在していませんでした。それら軽い元素が集まって恒星ができ、その恒星の中心部で起きる核融合反応によって、酸素や炭素などの重元素が作られました。それらの重元素は、星が死ぬときの超新星爆発によって宇宙へとばらまかれることで、宇宙空間に重元素が存在するようになりました。
これまでの観測から、宇宙誕生後数億年ごろの銀河の内部に炭素や酸素があることは知られていました。しかし銀河の外にどれくらい重元素が広がっているのかについては、感度の限界のために分かっていませんでした。
研究チームは、宇宙誕生7億~11億年ごろに存在する銀河の炭素をとらえたデータを、アルマ望遠鏡のアーカイブデータから集め、複数の銀河のデータを重ね合わせる処理を行いました。それにより従来の5倍に達する高感度のデータが得られ、炭素のガス雲が銀河の星の分布より5倍も広がっていることが分かったのです。冒頭の画像は、アルマ望遠鏡による複数銀河の炭素ガスのデータを重ね合わせたもの(赤)と、ハッブル宇宙望遠鏡による銀河の星の分布(青)を合成したものです。
Image Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NASA/ESA Hubble Space Telescope, Fujimoto et al.
冒頭の画像では、アルマ望遠鏡のデータ(赤)とハッブル宇宙望遠鏡のデータ(青)の区別が分かりづらいかもしれません。この動画を見ると、赤と青の区別がよく分かると思います。
こちらは観測結果をもとに描いた、銀河のまわりの炭素ガス雲の想像図です。中央の青白い星の分布に比べて広い範囲に炭素ガス雲が広がっています。このような炭素ガス雲の広がりは、今ある理論モデルでは説明できていません。