この画像に映っているのは、NASAのニュー・ホライズンズ探査機が2019年1月1日に撮影した太陽系外縁天体アロコス(以前はウルティマ・トゥーレと呼ばれていました)です。別々の二つの天体が接近してくっついてできたと考えられています。(参考記事→ニュー・ホライズンズ探査機がとらえたカイパーベルト天体「アロコス」
画像を一見すると、アロコスは球体が二つくっついた雪だるまのような形に見えるかもしれません。しかし実際にはアロコスは、平らな雪だるまのような形をしています。煎餅と平たい饅頭がくっついたような形なのです。
アロコスは形成当初からこのような形をしていたのでしょうか。あるいは徐々に形が変化して現在の形になったのでしょうか。
太陽から40億km以上離れたところにある太陽系外縁天体は、凍ったまま変化していないという考えが一般的です。ただアロコスの表面はなめらかで衝突現象が頻繁に起きているようには見えず、また独特な平らな形をしていることから、そのような考えには疑問が残ります。
太陽系の天体は約46億年前に塵の円盤の中で形成されたと考えられています。塵が集まって塊となり、それらがさらに衝突・合体を繰り返して大きな天体になっていったのです。そのような過程の中で、どうすればアロコスのような平らな天体が形成されるのかについての説明は今のところありません。
一方、中国科学院とマックスプランク太陽系研究所の研究者らの研究によれば、アロコスはもともと球体と楕円体が合体した形だったものが、しだいに平らになっていった可能性が示唆されています。
太陽系ができた頃、アロコスがある領域は低温で塵に覆われた環境だったとみられています。低温のために微惑星は、一酸化炭素やメタンなどの揮発性物質の氷が付着した塵から構成されていました。アロコスが形成された後で周囲の塵が晴れて太陽光が当たるようになると温度が上がり、凍りついていた揮発性物質が急速に昇華して平らな形になった可能性があるといいます。
アロコスの自転軸は軌道面にほぼ平行です。そのためアロコスが太陽を298年かけて公転する間、一方の極はほぼ半分の期間ずっと太陽に向き続け、もう一方の極は影になります。残りの半分の期間は、太陽に向き続ける極と影になる極とが逆になります。公転軌道の離心率が小さいことも関係して、南北両半球でほぼ対称的に氷が昇華して、現在のような形になった可能性があります。このように扁平になる過程は天体の進化の初期、100万〜1億年間で急速に進んだと考えられるとのことです。
Image Credit: NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute/Roman Tkachenko