2019年10月ごろから2020年4月ごろにかけて、オリオン座の1等星ベテルギウスが暗くなったことが話題となりました。この減光は、ベテルギウスから放出されたガスをもとに生成された化合物(塵)が光をさえぎったことが原因ではないかと考えられてきました。今回、減光の原因が塵ではなく、ベテルギウス表面に出現した巨大な黒点ではないかとする研究が発表されました。
研究チームは、南米チリにあるAPEX(Atacama Pathfinder Experiment、アタカマ・パスファインダー実験機)と、ハワイにあるジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡(JCMT)によるサブミリ波での新旧の観測データを比較しました。その結果、ベテルギウスの減光中、サブミリ波でも20%暗くなっていたことが判明しました。なおサブミリ波とは、波長が1mm以下の電波のことです。
塵の影響を計算した結果、サブミリ波での明るさの低下は塵の生成が増加したためではないことが分かりました。研究チームによると、可視光とサブミリ波とで同時に暗くなることは、ベテルギウスの平均表面温度が200℃低下したことを示しています。
ただベテルギウス全体が均等に冷えたわけではないようです。2019年12月に撮影されたベテルギウスの高解像度画像は、領域によって明るさにばらつきがあることを示しています。サブミリ波での結果と併せて考えると、明るい光球面より温度の低い黒点が表面の50〜70%を覆っていることを明確に示しているとのことです。