大質量星は軽い「星の種」から生まれる!?

赤外線暗黒星雲の内部構造の想像図。Image Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), K. Morii et al.
赤外線暗黒星雲の内部構造の想像図。Image Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), K. Morii et al.

太陽の8倍以上の質量をもつ大質量星の形成過程は、太陽程度の質量の星(小質量星)と比べて不明な点が多く残っています。

東京大学/国立天文台の森井嘉穂氏などの研究チームは、大質量星を作ると期待される、大質量で高密度の雲39領域をアルマ望遠鏡で観測しました。これらの雲は、赤外線でみると暗く見えることから「赤外線暗黒星雲」として知られています。

アルマ望遠鏡によって39領域を電波で観測したところ、雲に埋もれた「星の種」である分子雲コアを800個以上検出しました。これは、赤外線暗黒星雲で特定されたこれまでで最大のサンプルです。多数のサンプルを用いることで、大質量星の形成について統計的に議論することが可能になりました。

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形成過程が小質量星と同じだとするとコアの質量が足りない

アルマ望遠鏡で観測した39領域の塵の分布。Image Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), K. Morii et al.
アルマ望遠鏡で観測した39領域の塵の分布。Image Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), K. Morii et al.

小質量星の形成では、初期のコア質量の約30〜50%が星の質量となり、残りのほとんどは赤ちゃん星からガス流(アウトフロー)として噴出します。大質量星も同様に形成されると仮定すると、これらの星の種の99%以上は、大質量星を形成するのに必要な質量を持っていないことが明らかになりました。このことは大質量星の形成メカニズムが、小質量星とは異なることを示唆しています。

星の集団をみると、大質量星はまとまって、小質量星は散らばって存在しています。今回の観測による統計データを分析したところ、星の集団とは異なり、大質量のコアも小質量のコアと同じように散らばって分布しているようすがみられました。一方で、より高密度のコアが集まって存在する傾向があり、大質量のコアよりも高密度のコアが大質量星に成長する可能性があることを示唆しています。

(参照)アルマ望遠鏡