NASA(アメリカ航空宇宙局)は2024年6月4日(日本時間5日未明)、ハッブル宇宙望遠鏡のジャイロスコープの運用方法を変更すると発表しました。これまで3つのジャイロを用いて運用してきましたが、今後は1つのジャイロのみを用いて運用することになりました。
ジャイロスコープは、望遠鏡の向きを変更する際、どれくらいの速さでどの方向に回転しているかを測定するための装置です。3つのジャイロのうちの1つに不具合が発生したことで、ハッブル宇宙望遠鏡は5月24日にセーフモードに入って科学観測を中断していました。
すでに予備のジャイロがない状況
ハッブル宇宙望遠鏡にはもともと、6つのジャイロが搭載されています。スペースシャトルによって行われた2009年の最後の保守ミッションで、すべてのジャイロが新しいものに交換されました。観測に必要なジャイロは3つで、残りの3つは予備(バックアップ)として確保されていました。
最後の保守ミッションから10数年が経過する中で3つのジャイロが故障し、すでに予備がない状態になっています。昨年来、特定の1つのジャイロで不具合が多くなり、昨年11月と今年4月にもジャイロの不具合が原因でハッブル宇宙望遠鏡はセーフモードに入っていました。
過去には2つ以下のジャイロで運用されたことも
望遠鏡を効率よく運用するには3つのジャイロが必要です。しかし2つ以下のジャイロでも科学観測の継続は可能です。ハッブル宇宙望遠鏡では、2005年から2009年まで、2つのジャイロでの運用が行われていました。また2008年には、1つのジャイロでの運用も短期間、行われたことがあります。NASAによれば、2または1ジャイロモードでも、観測の質には影響がなかったとのことです。
1ジャイロでの運用には制限も
今後は1つのジャイロを使用し、もう1つのジャイロは使用中のものが故障した場合の予備となります。1ジャイロモードで運用することで、望遠鏡を観測目標の天体に向けるのにこれまでより時間がかかったり、火星よりも近い移動天体を追跡することができなかったりするなど、いくつかの制限が生じることが予想されています。ただハッブル宇宙望遠鏡を使って、火星より近い天体を観測することはめったにありません。
1ジャイロモードへの移行には、望遠鏡や地上システムの再構成、また今後の観測計画への影響の評価が必要になります。運用チームは、6月中旬までにハッブル宇宙望遠鏡の科学運用を再開する予定としています。
Image Credit: NASA
(参照)NASA