天の川銀河から最も近い銀河団である「おとめ座銀河団」の中で、謎に満ちた星の集団が発見されました。新たに発見されたこの星団には若く青い星だけが含まれ、その星々は不規則に分布しています。何より不思議なのは、この星の集団が銀河の中に存在しておらず、親銀河からはるか遠く離れた銀河間空間に孤立して存在していることです。
アメリカ、アリゾナ大学のMichael Jones氏らの研究チームは、このような全く新しいタイプの星の集団を、おとめ座銀河団で複数発見しました。この星の集団のことを研究チームは「blue blobs(青い塊)」と呼んでいます。それぞれの星の集団の質量は天の川銀河の100万分の1ほどで、星の数は1万〜10万個ほどです。
銀河は明るいほど重元素が多い傾向にありますが、発見された星団は、同じ明るさの銀河と比べて重元素が非常に多いことがわかっています。このことは、これらの天体が銀河から剥ぎ取られた重元素の豊富なガスから形成されたことを示唆しています。「重元素は星形成が繰り返されることでできるものなので、大きな銀河でしか作ることができないのです」とJones氏は言います。
銀河からガスを剥ぎ取る2つの方法
ではどうやって銀河からガスが剥ぎ取られたのでしょうか。銀河からガスを剥ぎ取るには方法が2つあります。1つは複数の銀河同士の重力相互作用です。銀河同士が接近したときに潮汐力によってガスや星が剥ぎ取られることがあります。
もう1つは動圧(ラム圧)によるガスの剥ぎ取りです。これは銀河団の中を銀河が移動するとき、銀河団に満ちている高温ガスの圧力(動圧、ラム圧)によって銀河のガスが剥ぎ取られる現象です。
研究チームによれば、いずれも剥ぎ取られたガスから星が形成される可能性があるとのことです。ただ動圧による剥ぎ取りの方が銀河から遠ざかる速度が速く、若い星からなる星団が孤立していることを説明できることから、研究チームでは、動圧によって剥ぎ取られたガスからblue blobsができたと考えています。