ISS(国際宇宙ステーション)に物資を届けるため、2021年6月4日(日本時間)にドラゴン宇宙船がファルコン9ロケットで打ち上げられました。翌5日にISSへ到着したそのドラゴン宇宙船には、緩歩動物クマムシが搭載されていました。
クマムシは非常に厳しい環境に耐えられることが知られており、「最強生物」と呼ばれることもある生物です。「乾眠」と呼ばれる仮死状態になると、高温・低温、乾燥、真空、高圧、放射線環境など、さまざまな過酷な環境に耐えることができます。2007年にクマムシは、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の実験衛星フォトンM3(Foton-M3)に搭載され、低軌道上で宇宙環境に11日間さらされながらも生き延びました。
今回、クマムシはISSの外に出されるわけではありません。ISS向けに開発された機器(Bioculture System)の中で暮らし繁殖します。そしてクマムシの遺伝子が宇宙でどうなるのかについて調べられます。短期間および長期間の宇宙飛行に応じて、どの遺伝子がオンあるいはオフになるかが明らかになれば、ストレスの多い環境で生き残るためにクマムシがどのような方法を採っているのかを特定することにつながります。
また地上の極限環境でオン・オフする遺伝子と照らし合わせることで、宇宙飛行のみに反応する遺伝子を特定することができます。それを通じて、クマムシが宇宙環境に適応して生き残るために本当に必要なものが何なのかを検証します。
地上での実験の場合、クマムシの反応を研究するために宇宙飛行の状態を模擬して行われます。これは宇宙実験と比べるとより一般的でコストもかかりません。今回のISSでの実験では、地上実験での条件が、実際の宇宙飛行にどれだけ近いのかを知ることもできます。
長期的には、クマムシの耐性が高い理由を明らかにすることで、食品や医薬品のような生物由来物質を極端な温度や乾燥、放射線から守る方法につながる可能性があるとのことです。
Image courtesy of Boothby Lab