口径39mの超大型望遠鏡「ELT」、建設が50%完了。2028年観測開始予定 | アストロピクス

口径39mの超大型望遠鏡「ELT」、建設が50%完了。2028年観測開始予定

ESO(ヨーロッパ南天天文台)は現在、南米チリで39mの主鏡を備えた超大型望遠鏡ELT(Extremely Large Telescope)を建設中です。建設は順調に進んでおり、完成までの道のりの50%に達したと2023年7月11日にESOが発表しました。

建設はチリのセロ・アルマゾネス(Cerro Armazones)山頂で進められています。現在は技術者と作業員が望遠鏡のドーム構造を組み立てているとのことです。写真は2023年6月下旬に撮影されたもので、鉄骨構造はすでにドーム状になっていることがわかります。背景の空には天の川のほか、大小のマゼラン銀河も見えています。

ELTの主鏡(M1)は798個の六角形のセグメント鏡(分割鏡)からなります。各セグメントの直径は1.45m。この主鏡をはじめ、ELTの光学系はM1からM5まで5枚の鏡で構成されています。直径2.4mの4番目の鏡(M4)は、大気のゆらぎなどを補正するため1秒間に1000回、形状を調整する機能が備わっています。これらの鏡の製造も順調に進んでいるとのこと。

また補償光学システムの一端を担う6つのレーザー光源はすべて製造されており、試験のためにESOに納品されました。望遠鏡の制御システムや装置など、その他のシステムも開発または製造が順調に進んでいるとしています。ELTに最初に搭載される4つの科学機器はすべて最終設計段階にあり、一部は製造がもうすぐスタートします。電力を供給する太陽光発電プラントは昨年稼働しはじめました。

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後半は前半より作業が大幅に早く進む予定

ドローンから撮影されたELTの建設現場。上の画像と同じく2023年6月下旬に撮影された画像です。
ドローンから撮影されたELTの建設現場。上の画像と同じく2023年6月下旬に撮影された画像です。

ELTの建設は9年前の起工式から始まり、現状で50%まで進みました。ただ後半の50%は、前半よりも大幅に早く5年で完了すると予想されています。

前半は、ELT向けのさまざまな構成要素の大部分について、設計を最終決定するための、細心の注意が必要な時間のかかるプロセスが含まれていました。またセグメント鏡など一部の構成要素は、大量生産の前に試作と試験が必要でした。後半は、そのような時間のかかるプロセスが大幅に減ることになります。さらにここ数年は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる遅れも生じていました。

今後、2025年には副鏡(M2)が完成、26年にはドームおよび望遠鏡の構造が完成予定です。27年にはM3、M4、M5の鏡が完成し、さらに主鏡(M1)のセグメントの組み立てが始まります。2028年にファーストライトを経て科学観測がスタートする予定になっています。

Image Credit: ESO

(参照)ESO