現在、本格的な科学観測へ向けて準備中のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡。18枚のミラーセグメントからなるウェッブ望遠鏡の主鏡は宇宙空間にさらされているため、微小な流星物質(塵)が主鏡に衝突することは避けられません。NASA(アメリカ航空宇宙局)によれば実際に2022年5月23日〜25日の間、主鏡のセグメントの1つに塵が衝突しました。ただしその影響はゼロではないものの、望遠鏡の性能はミッションの要件を満たす性能を維持しているとのことです。7月12日に予定されている最初のカラー画像の公開には変更はありません。
塵の衝突は想定済み
ウェッブ望遠鏡は太陽-地球系の第2ラグランジュ点(L2点)から観測を行います。L2点は、太陽から見て地球の反対側、約150万kmの地点です。そこでは地球近傍よりは少ないとはいえ塵が飛びかっています。ウェッブ望遠鏡の開発にあたっては、L2点の環境での塵の衝突に関してシミュレーションや衝突試験を行い、塵の衝突があっても性能を維持できるように設計されました。
またウェッブ望遠鏡では、塵が衝突したとしても鏡の位置を調整することでその影響を軽減することもできるようになっています。今回の衝突に関しては、その調整がすでになされており、今後も必要に応じて微調整が行われていくとのことです。
彗星の通り道には流星群の元になる塵が多く存在していますが、ウェッブ望遠鏡がその塵の中を通ると予測できる場合は、事前に保護するための操作を行うことになっています。ただ今回の衝突は予測できない偶然のものでした。
打ち上げ以来、塵の衝突は何度が検出されたことがありますが、今回の衝突の影響は想定を超えるものだったようです。今後もこのような偶然の衝突は避けることはできず、望遠鏡の機能は徐々に低下していくと想定されています。その中で、塵の衝突による影響を分析しつつ、できるだけ長く望遠鏡の性能を最大限に発揮できるよう運用されていくことになります。
Image Credit: NASA GSFC/CIL/Adriana Manrique Gutierrez