40億年ほど前の火星で、分厚い氷床の底に地熱で氷が溶けて水がたまった場所があり、そこが火星の生命にとって最も生存に適した場所だったのではないかとする研究が、アメリカ、ラトガース大学のLujendra Ojha氏らによって発表されました。
太陽は時間の経過とともに徐々に明るくなってきたと考えられています。約40億年前は太陽が今よりも暗く、当時の火星はかなり寒冷だったはずです。しかし火星表面には川のような地形や水に関する鉱物などが残されており、約41億〜37億年前(「ノアキアン時代」と呼ばれます)には、火星の表面に水が豊富に存在していたと見られています。気候モデルと地質的な記録との間の矛盾は「暗い太陽のパラドックス」と呼ばれています。
地球では南極などで、地熱によって氷が溶けることで厚い氷床の下に湖(氷底湖)が存在していることが知られています。ノアキアン時代の火星で、地熱によって氷床の底の氷が溶けることが可能かどうかを確認するため、Ojha氏らは火星のさまざまなデータセットを調査しました。その結果、地下で氷を溶かすのに必要な状況が、古代の火星で至る所に存在し得ただろうことが示されたとのことです。
仮に40億年前の火星が温暖湿潤な気候だったとしても、磁場が失われ大気が薄くなって気温が低下していき、液体の水は非常に深いところでのみ安定して存在し得た可能性があります。火星で生命が生まれていたとしたら、安定的に存在する水を求めてより深いところへと移っていったかもしれません。地下深くでは隕石衝突や有害な放射線などからも守られます。
Ojha氏は、地下深くでは熱水活動などにより生命が維持されていた可能性もあり、地下は火星において最も長く生存可能な環境だったかもしれないと述べています。
Image: ESA/DLR/FU Berlin, CC BY-SA 3.0 IGO. 3D rendered and colored by Lujendra Ojha