正体不明、謎の「ダークマター(暗黒物質)」がついに見えた!? | アストロピクス

正体不明、謎の「ダークマター(暗黒物質)」がついに見えた!?

宇宙には「ダークマター(暗黒物質)」が存在することが確実視されています。ただ、その正体はわかっていませんし、これまで観測されたこともありません。そんなダークマターが初めて見えたかもしれないとする研究が、東京大学大学院理学系研究科の戸谷友則教授により発表されました。

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WIMPの対消滅で出たガンマ線をとらえたか

この画像に映っているのは、天の川銀河の中心方向に広がるハロー状のガンマ線放射です。中央のグレーの部分は、解析から除かれた領域を示しています。画像は東京大学大学院理学系研究科・理学部のホームページより。
この画像に映っているのは、天の川銀河の中心方向に広がるハロー状のガンマ線放射です。中央のグレーの部分は、解析から除かれた領域を示しています。画像は東京大学大学院理学系研究科・理学部のホームページより。

正体不明のダークマターの候補としては、「WIMP(Weakly Interacting Massive Particle)」と呼ばれる未知の素粒子が有力とみられています。

自然界にはたらく力(相互作用)には、重力、電磁気力、強い力、弱い力の四つの力が知られています。WIMPは、そのうち電磁気力や強い力ははたらかず、重力と弱い力だけがはたらくと考えられている、質量の大きな仮説上の粒子です。

2つのWIMP粒子が衝突すると、対消滅して高エネルギーのガンマ線が出ると考えられています。天の川銀河の中心方向など、これまでダークマターが密集している領域からやってくるガンマ線が探索されてきました。ただそのような領域では、宇宙線や天体起源のガンマ線放射が観測されるため、ダークマターのかすかな信号を探すのは大変です。

天の川銀河などの銀河は、巨大なダークマターの集まり(ダークマターハロー)に取り囲まれています。戸谷教授は、天の川銀河の中心方向の60度四方の範囲で、銀河面に沿った領域を除いて解析を行いました。そこはダークマターハローからの放射が比較的強く、銀河面からの天体起源の強烈な放射を避けることができます。

2008年に打ち上げられたガンマ線天文衛星フェルミの最新の15年分のデータを利用して解析を進めた結果、ハロー状にぼんやりと広がるガンマ線放射が発見されました。それはダークマターハローが放射している場合に予想される形状とよく一致しているとのことです。

またその放射のガンマ線スペクトルは天体起源のものとは似ておらず、陽子の500倍ほどの質量をもつWIMPの対消滅から予想されるものと似ていました。放射強度から見積もられる対消滅の頻度も理論予想とおおむね合致しており、ダークマターからの放射が初めてとらえられた可能性があるとしています。

今回の研究が確かなものであれば、ダークマターの正体がWIMPであることが判明することになります。同時にそれは、現在の素粒子物理学の標準理論では存在しない新粒子が発見されたことになります。ただ矮小楕円体銀河でのガンマ線観測のこれまでの結果と合わない部分があるなどの問題点があり、最終的な結論を出すにはさまざまな検証や研究が必要とのことです。

(参考)「ダークマター」関連記事一覧

(参照)東京大学