
この画像はジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がNIRCam(近赤外線カメラ)でとらえたもので、銀河団MACS J1149.5+2223の一部が映っています。さまざまな銀河が数多く映し出されており、画像の中には宇宙誕生から5億7000万年後に存在した「CANUCS-LRD-z8.6」と呼ばれる銀河も映っています。
予想外の速いペースでブラックホールが成長した?

こちらの画像の右の枠内は、CANUCS-LRD-z8.6の周辺を拡大したものです。
研究チームがこの銀河のスペクトルを解析したところ、高エネルギー放射線によって電離したガスが存在し、銀河中心のまわりを高速で回転していることが示唆されました。それらは物質が降着する超大質量ブラックホールの主な特徴です。
ブラックホールの質量も推定され、初期宇宙のものとしては異常なサイズであることが明らかになりました。またCANUCS-LRD-z8.6はコンパクトで重元素が少ない、つまり進化の初期段階にある銀河であることが示されました。
銀河中心の超大質量ブラックホールとその親銀河の質量には相関関係があることがわかっています。親銀河の質量が大きいほど銀河中心のブラックホールの質量も大きいのです。ところがCANUCS-LRD-z8.6では、中心にあるブラックホールの質量が銀河の質量に対して予想されるより大きく、通常の関係とは異なっていました。このことは、初期宇宙では比較的小さな銀河でもブラックホールが形成され、親銀河より非常に速いペースで成長した可能性を示唆しています。
研究チームの一人、スロベニアのリュブリャナ大学のMaruša Bradač教授は「この銀河におけるブラックホールの予想外の急速な成長は、これほど巨大な天体がこんな初期宇宙に現れる過程についての疑問を提起します」と述べています。
研究チームは、銀河内の低温ガスや塵をさらに研究し、ブラックホールの特性についての理解を深めるため、アルマ望遠鏡とウェッブ望遠鏡を用いた追加観測をすでに計画しているとのことです。
Image Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, G. Rihtaršič (University of Ljubljana, FMF), R. Tripodi (University of Ljubljana, FMF)
(参照)ESA/Webb

大宇宙 写真集500【改訂新版】
探査機が見た太陽系【第4版】
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がみた宇宙【改訂版】